「原作ネタバレあり」あゝ、荒野 前篇 やさんの映画レビュー(感想・評価)
原作ネタバレあり
原作読者です。
内容のことに関しては大体ほかの方々と同じ意見です。
しかしセックスシーン多かったなという感想もあります。
そんなにいるかなぁ、と思いました…。
これは「親」と「子」を中心テーマに置いていると思います。
特に「父」と「子」を。
寺山修司が作詞した「戦争は知らない」という曲がありますが、それを聞くとなるほど、と思うかもしれません。
『戦争の日を何にも知らない だけど私に父はいない
父を思えば あぁ荒野に 赤い夕陽が 夕陽が沈む』
あぁ荒野、という言葉も入っていますね。
寺山は良くも悪くも、コンプレックスの塊のような作品を作ります、それが不思議な熱を帯び、力強い作品になることが魅力的です。
それを、見事に表現していたのは素晴らしかった。
菅田将暉の即興的にも見える演技、ヤン・イクチュンのしっかりと入り込んでる演技、ユースケ・サンタマリアのキャラに入り切った演技…セックスシーンは多かった!もういい!と途中から思いました。
途中で自殺予防サークルかなんかのシーン、あれ原作では「早稲田大学 自殺研究会」って名前で、予防したいわけじゃないんですよね。
だけど無理やり「予防」にしてるから混乱する。原作では「自殺研究会で作った自殺機械を試したいから、本当に自殺する人を探さなければならない」→「バリカンの父を見つける」ということなんですが、なんで設定変えてしまったんでしょう。
でもあのライブでの舞台装置、あれ寺山修司主宰の「演劇実験室 天井桟敷」でよく用いられていた舞台装置の骨組みですね。
白い人達が踊っていたのは暗黒舞踏かな?
バリカンの父の設定も掘り下げてくれるとうれしかったな。彼は「話のネタになる本」なるものを持っていて、それを持ってだれかれに話かけに行く、孤独な一人の人間なんです。
ただの暴力おやじみたいになっているから、どうかなぁと。
後編見てないから何とも言えないけど!
原作読むと、なぜバリカン父が切った爪を缶の中にためているのか、なぜ芳子があんな風に生きているのか、なぜ宮木は性的な孤独をもっているのか、などなど、すべてわかります。
でも150分全く飽きなかった!
ずっと集中して、みつづけられました。