「Taste F**king Good」オクジャ okja mos89さんの映画レビュー(感想・評価)
Taste F**king Good
人は肉を食べるが、動物を食べると言い換えたばあい、よしあしで喧々と討議になる。
たとえば、わたしはイルカ肉なんて食べたことも見たこともないが、所によってはそれが食肉になる。となると抵抗を感じる。別にイルカ食べなくてもいいだろ、と思えてしまう。
同じ理由で捕鯨が世界から目の敵にされている。常に日本が槍玉なのだが、私は30年来口にしていない。昔は給食にあったが、きょうび、くじらなんて、いったい誰がどこで食べているのだろう?
人目を引く3BはBeautyとBaby、もうひとつがBeast。私も猫やら小動物の動画をすぐにクリックするたちである。そんな愛らしいものが食用になるとは考えられない。
しかしニンゲン、肉を食べる。動物側にしてみれば、食用とするか、しないか、人側の使い分けに意味はない。牛豚に生まれたら来世で犬猫を願うほかはない
私がもし遺伝子操者だったら、食肉用に交配する新獣に、憎々しい外見を与えるだろう。ミランドCEOは味が最重要とおっしゃるが、人の食い物を創出するなら、何よりそれが重要だ。愛らしい外見には情が芽生えてしまう。この映画のオクジャのように。
ただし、映画は不毛な論争とは無縁、肉食でもヴィーガンでも楽しめる。
Netflixゆえにカンヌを落としたが、相対したら観客賞はまず間違いなかった。
目を見はるほど完成度が高い。怪獣に人間ドラマを絡ませ、同監督のグエムルを彷彿とさせる。
アプローチ、落としどころはハリウッド的。エンターテインメントを標榜しながら要所要所でギラリと(キラリと、ではなく)光ってエンタの枠をつきぬける。うまく言えないが、ポンジュノ監督、やはり映画を知っています。
最大の魅力は少女ミジャ。
あどけないのに熱いハートと野性がある。
本邦だったら、虐待ではないのかと物言いがつきそうな、苛烈な役作り。
年端もいかない女の子が、走る転ぶ叫ぶ、どこまでも食らいつき、流血もいとわずカラダごとぶつかってくる。
そのしたたかな強さを通じて、誰にも頼ることのできない韓国社会が浮かび上がってくる。韓国映画に一様に見られる非情さが、この映画でもダイナミックな躍動を生みだしているように感じられた。
ギレンホールにTスウィントンにPダノ、ハリウッドの一線俳優が並み居るのだが、子役ミジャ(アンソヒョン)が食ってしまう。その生命を吹き込んだジュノ監督の演出力に圧倒されました。