「壮大過ぎる設定と膨大過ぎる説明に時間を割きすぎた。」映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
壮大過ぎる設定と膨大過ぎる説明に時間を割きすぎた。
もうここ数年は、毎年欠かさず映画館で観ています「ドラえもん映画」。去年の予告(?)でエスキモーみたいな服を着たドラえもんを見て、「アナ雪が当たったからってドラえもんも二番煎じに手を出すのか?」なんて穿ってしまったけれど、そんなことはありませんでした。むしろ世界観は「アトランティス」。実際アトランティスを作中でも示唆しています。
今年はオリジナルストーリーの年。いつになく世界観が壮大で、冒険の規模が違う。タイムトラベルも10万年という時間を往復するし、舞台も南極の氷のその下の都市という特殊な土地。よって、説明しなければならない設定が山のように生まれ、それを語り切るのになかなか苦心しているのが伝わるよう。冒険には「動機」と「目的」が必要不可欠なのだけれど、この2つが出そろうまでに大変な上映時間を費やしてしまった。だから、冒険の過程のドキドキハラハラのシーンはまさかのモンタージュで要約されてしまうほど。ちょっとそれはないんじゃない?
冒険の「動機」は金のブレスレットを拾ったことで早い段階で説明が付くけれど、その後の冒険の「目的」つまり「ゴール」がなかなか明示されないので、一体この後物語がどう展開し、何をもって結末とするのかがはっきりしない。その宙ぶらりんの状態で物語が進む危うさ。この映画の世界観とストーリーを本当にきちんと語り尽くす為には、スピルバーグが3時間のファンタジー巨編にしてたっておかしくない。それをどうにか2時間の「ドラえもん映画」として子供たちに向けて作品にするのに、掻い摘んで掻い摘んで結果、忙しなく強引な物語になってしまった感は拭えなかった。説明ゼリフが多いのも難点。子どもたちはこれでちゃんと設定を理解して映画を楽しめていたのだろうか?ちょっと心配。
ドラえもんは子供たちのための映画だから、別に大人の鑑賞に堪えなくても構うことはないんだ。ただ、本当に子どもを飽きさせない映画にはしておいてもらいたいよね。だから大規模な話じゃなくても壮大な冒険じゃなくってもいい。子どもたちの夢を叶えるような映画を、ドラえもんには作ってほしいっていつも思う。
ただ志は買うぞ。ドラえもん映画だからといって、分かり易い世界の分かり易い冒険にはしないぞ、という志だけは。