「『暴力』を介在させるということ」ひかりをあててしぼる いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
『暴力』を介在させるということ
※映画館なのにブルーレイディスクなのが残念
DVがテーマの、実際に渋谷で起こった殺人事件をモチーフとしたホラー映画ということであるが、人間の深層心理や出自、環境という複雑な行程の中で形成されていく人格が紡ぎ出す或る意味不条理な状況を描いていく作品。
新聞や雑誌、ネット等で何となくドメスティックバイオレンスについての事情を見聞きしてはいるが、やはりこうして映像として一つのストーリーに展開されるとその理不尽さに鬱々とさせられる。幼い頃に襲った居たたまれない不幸は、しかし全ての人間が引き摺る訳ではないが、あるトリガーが発端に徐々に負の連鎖が転がっていく流れをコンパクトに収めている。だからもう少しその深層心理が知りたかったのだが、それは作品の主題ではないので、仕方ないのだろう。
ただ、被害者(DVでは加害者)の親友の役どころがフワフワしていて、多分ストーリーテラーの位置づけなのだろうがうまく話に溶け込んでいない感じがした。中途半端さが滲んでいて勿体ないなぁと・・・ほんとはその被害者の男が好きだったというバイという設定に偏ればスッキリすると思うのだが。 だが、確かにああいう狂気的な状況に置かれて、自分だったら恐怖に戦慄するのだろうかとその想像力が足りないので、こればかりは自分でも分からない。果たして自分ならば死体処理の手伝いに従うのだろうか、それとも警察に駆け込める程の力があるのだろうか、腰を抜かすという事象を経験したことがないからイマジネーションが湧かないのは自分でも残念である。
ラスト付近の、幼少時の忌まわしい記憶の中での、妹の機転から暴力をやり過ごした出来事のシーンに制作者の意図があると思うのだが、これも薄ボンヤリしていて、自分の読解力の無さに甚だ落ち込むことしきりである。
『なんでお姉ちゃんばっかり?・・・』 妹の真意は? 言われたお姉ちゃんの心境は? 今にして思えば妹の気持ちは?かなり難解な作品であった。