幸せなひとりぼっちのレビュー・感想・評価
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君が好きな物を注文出来るように
映画「幸せなひとりぼっち」(ハンネス・ホルム監督)から。
妻に先立たれた老人が、変人と言われるほど頑固を貫き、
孤独感を味わいながら生活している。
その彼が、隣人一家をはじめ多くの人との触れあいを通して、
少しずつ再生していく姿を描いた作品なのだが、
気になる一言は、まだ若かった彼と妻が、
始めて出かけた、食事のデートシーンの回想場面。
お金がなく助けてもらった恩を忘れず、やっと貯めたお金を握りしめ、
彼女を待ち続けた。
そして「お金を返したかったんだ」と渡そうとすると、
彼女は、サラッと「食事のほうがうれしいわ」とデートに誘う。
そして、楽しみにしていた、レストランでの食事シーン。
若い男性なのに、あまり注文しない様子をみかねて、
「それだけでいいの?」と、彼女が彼に尋ねる。
彼はすまなそうに「食べてきた・・」とぼそっと呟く。
その答えを耳にして、慌てて彼女が「どうして?」と聞き返す。
そして、彼はこう答える。
「君が好きな物を注文出来るように」
貧乏でやっと貯めたお金だから、2人分だと少ししか食べられない。
それよりも、彼女に好きな物を好きなだけ注文して欲しい、
だから自分は事前に自宅でお腹を膨らませてきた。
こんなことを言われて、嬉しくない女性はいないだろう。
ストーリーとはあまり関係ないシーンだけど、よかったなぁ。
素晴らしい
何だろう。
この観た後の心が温まる感じ。
決して期待していなかったからか、素晴らしい。
こーゆーキッチリした秩序の塊のお爺さん
私は好きだし、ご近所付き合いの大切さを知る。
二回の出産、戦争を乗り越え言葉の壁と戦い
ダメンズと結婚して尚、運転ができないなんて
そんなはずない…たしかに笑と思ってしまった。
猫と寝る猫の鼻を鳴らす音も愛おしさを感じてたし
本当は全てを受け入れるだけなのかもしれない。
恐れずに運命や人を受け入れたじいじの話。
特にゲイを差別しなかったし、自転車を直して
子供のお世話をして、食洗機を取り付けてあげて
素晴らしい、こんなご近所さんが私も欲しい♡
じいじの人生をご近所さんが、ご近所さんを
じいじが助け合う素晴らしい作品。
あぁ好きな人と結婚しよう。お金持ちじゃなくとも
私がこの人だって決めた人と結婚ってするものだと
改めて思うし家族って素晴らしい。
奥さんが自分は子供を失ったのに、他の子を
教育して育てたという話にも感動した。
新しい命って良いなぁ、動物っていいなぁ、
人って互いに温め合うものなんだなぁと思う。
拒絶ではなく共存が大切なのだと改めて学ぶ
実に素晴らしい作品でした。
明日は周囲に優しく出来そうです。
ソーニャが素晴らしい。そして猫さまが麗しい。
なんでそんなにサーブが好きで、なんでそんなにボルボがきらいなのかしらんけど、こだわりが強すぎて面倒なおじさんでしたが、なんだか憎めませんでした。
生い立ちのせつなさもあると思います。
お父さんの死因かわいそうすぎるし、ソーニャがもう切ない。
ソーニャがとってもヘルシーでセクシーでチャーミングで、
とっても好きなタイプの女性だったのです。
ソーニャの魅力がオーヴェのアクを和らげてくれたように
思います。
大きなお口で豪快に笑い、キスは積極的で、かっこいい。
素敵な人だったですよ。
あとは猫ね。外猫ってことは野良?でも見た目が、
ノルウェージャンフォレストキャットかセルカークレクッスか
はたまたラグドールかメインクーン的な、美しい猫さまでした。
思い込みが激しくて、正しさに取りつかれていて、
文句言いながら助けてくれるオーヴェが、自殺せずに
生きることにしたのに、発作起こして亡くなってしまうってね。つらかったわ。
万人受けするための大味感もあります。
人物造形が荒っぽいというか、
結構話の筋を面白くさせるために、都合よく事故とか死を
はさむっていうあんまり好ましくない手法がちらほらするの
ですが、
それでもちょっといいなーと思ってしまうのが、くやしいかったです。
家を立ち退きさせた役所の人への恨みが、
通行禁止の私道を車で走る、いけ好かない福祉系の役所の人に
転嫁されてたり、あんまりいい態度とは思えないオーヴェですが、
お隣のペルシャ系妻を助け、その子供を愛し、
妻の教え子を助ける(いやいやだけどね)など、
とってもいい人でもあって。
いいところもいっぱいあって、でもやなやつでもあって、
でもやっぱいい人で、ええ、けっこう素直に号泣いたしました。
たった一人をずっと愛するって、できるのか、
それとも結構あることなのか、私にはわからないんですけどね、あった方がいいんじゃん?という気持ちにはなれます。
オーヴェの前で、ドイツ車やらアメ車を自慢したらどんなことになるんでしょうね。
笑えて泣けて深い
愛する妻を失い、昨今の乱れた世間が許せず、これ以上生きていても意味がない、早く妻の元へ、と、自殺しようとするたびに近所の人から邪魔が入る。真面目で曲がったことが嫌いな彼は、今は単なる偏屈親父でも、過去にはいろいろ楽しい思い出もあった。
白いシャツを着る役人を嫌い、自動車はサーブしか認めず、どんな相手にも同じように厳しく、しかしゲイを差別したりはせず(移民はちょっと差別してたかな?)、いよいよとなれば困っている人を助ける。
60歳でおじいさん扱いは違和感アリだけど、ひとりぼっちだけど幸せという、タイトル通りの内容。
すごくよかった
自殺しようとしてその度に失敗するような展開は、さっさと死ねよとフラストレーションが溜まるものなのだが、この映画はその度に若いころの回想が始まって、それがすごくいい。偏屈なじいさんの映画なんて見るのが億劫なのであったが最後はボロ泣きしてしまった。特にゆりかごを取り出して渡すところに、当時の希望と絶望が込められていて切なくなった。
強さを持つこと…優しさに触れること…生きる事の難しさ…
いろんなレビューに書いてあるとおり、偏屈な老人が引っ越してきた一家との触れ合いの中で、閉ざした心を開いていくヒューマンドラマ…なのですが、本当に深くて、笑えて…悲しい映画でした。
早くから母を亡くし、無口で昔気質の父の愛で育った青年は、父をも失い、父にもらった形見の時計を守るため、自分を信じて闘う決意をし、父の残した家に住み続ける。
それから数十年が経ち、唯一の理解者であり光であった妻を亡くし、生きる希望を失った老人が、相変わらず自他共に厳しく、規律を守り、住宅地を勝手に管理しながら、妻を追いかけ自殺を試みたが、隣人に引っ越してきたのは、ポジティブで外連味無く誰とでも平等に接する家庭の妻だった。
こんな偏屈なおじいさんに何故にそんなに構うのか…?という疑問も最初はもったものの、本当に誰にも明るく接して、裏が全く感じられない人ってたまにいますよね。
そんな姿は、おそらく亡くした妻ソーニャがもっていたもの。
その無垢で誰にも屈託がなく、未来を信じる姿にオーべが両親以外で唯一本当に心を開いたのがソーニャだということが嫌というほどわかるエピソードが盛りだくさん。
家も失い、自分しか信じられるものがなくなってしまったオーべ青年の心を見事に開き、その愛情を注ぎ続けたソーニャが亡くなり、オーべ老人は、他人の正しくないことを厳正にただして、規律を保ち続けることでしか自己の存在意義を見出せなかったのでしょう。
絶望にかられ、愛する妻と後生で会うことを決め、自殺を図るオーべの前に、現れたパルバネ。その屈託のない性格とポジティブな生き方に、オーべも徐々に心を開いていく。
で、些細なことで許せなかった友人と心を通わせはじめ、パルバネの娘達に心を開き、妻の教え子の友人を家に泊めるようになり…順調に周りとの調和を取り戻して、そのことに「人が生きること=一人ではない」ということを感じ始めたラストは…。
人が生きるということは、自分には理解できない他人を排除して、いかに自分というものを保っていくか…孤高の人という生き方もあるものの、そんな生き方ができるのは本当にごく僅か…。孤高と思い込んでも、自分が気持ちを許した人がでた瞬間にその箍が一気にはずれたり、なんだかんだで他人に頼っていたり…いろんなケースはあるものの、オーべに生きる光を与えたソーニャ、その死によって再び閉ざした心を開いたパルバネとの出会いを経て、ようやく気付いた時には…。
人生の残酷さも同時に物語っている気がして…。悲しかったです。
あの世があるなら、幸せな生活の続きを送ると共に、きっと仲間との生活も楽しめるはず。
コミカルな部分もあり、笑いも誘う映画ですが、本当に深くて悲しいお話でした。
Ove 寡夫 無職 59歳
正直日本人目線だと79歳でもいいくらいの外見です。
どんなことでも筋を通さずにはいられない、融通がきかない、曲がったことは大嫌い。規則を守らない輩には容赦なく罵声を浴びせる。真っ向から正論を振りかざす。こういうオジサンは線なら定規を当てて引くだろうし、円ならコンパスで精確に描くだのだろう。
頑固オヤジには頑固になるだけの理由がある(から理解してあげないとダメなのよ)と聞いたことがあります。劇中では、理由というより主人公Oveのこれまでの人生を振り返る過程で、人格形成と元来の素質も見えてきます。
一人ずつ大切な人達に先立たれてしまう悲しさ。かなり不運の連続です。「一人で何でも出来ると思うな」と隣人に叱られるシーンがありますが、自分で何とか乗り越えていかねばと思わざるを得ない境遇だった感じがしました。車の進入禁止に特別やかましいのも、過去の事故が原因なのかな?と思いました。
後に妻となるSonjaがレストランで十分食事が出来るようにと、財布が淋しい自分はデート前に腹ごしらえ。初デートではカッコつけたがる男性が殆どだと思いますが、そんなことより彼女が美味しい食事をたらふく楽しめることを一番に考える優しさ。彼女の夢を叶える為に雨の中、学校に車椅子用のスロープを自作するOve。妻へのまっすぐで一途な深い愛情が伝わってきました。
妻の後を追うために、あの手この手で自殺を試みるのですが、その度に「邪魔」が入る所が面白いです。自分の血で家が汚れないようにビニールを張る細やかさ(^。^)。隣人達が彼を放っておかないのは、無愛想ながらも何だかんだ彼が常に正しいことをすると知っているからなのでしょう。Oveの性格なら自殺こそ許されない気もしましたが…。
コミュニティの大切さもそうですが、血の通っていないようなお役所的仕事も万国共通なのかなと思いました。
大笑いと涙、両方持っていかれた良作でした。それこそ人生なのかも知れません。オススメです。
コミカルだけどシビアで、とても公正な佳作
いきなり、割引の方法でクレームをつけるおじさんの姿に一瞬ひるむ気がするものの、物語が進めば進むほど、このおじさんが憎めないどころか愛おしくなってくる。店員に対するクレームには頂けない部分もあるものの、基本的には「筋の通らないこと」が嫌いなだけの男。ただの偏屈オヤジではない部分に安堵する。
物語は、亡くなった妻を追って自殺しようとする現在と、少年時代からの回想シーンの往復で成り立っている。この回想シーンが、決して偏屈に見える現在の主人公の言い訳ではなく、一人の男の人生の歴史として描かれているのにとても好感を持った。ともすれば嫌われてしまいそうな主人公から観客を引かせないための言い訳みたいな回想だったら、印象は違ったはず。一人の男が愛した父親の存在と最愛の妻の存在を浮かび上がらせ、それによって現在の主人公がいかに形成されたかがそっと縁取られるようなエピソードが積み重なっていく。
現在の物語は、ユーモアがあってとてもいい。自殺しようとする度に「他人」がこぞってそれを邪魔しにくる。その都度腹を立てて怒鳴り散らしたりするのだけれど、他人の介入によって少しずつ少しずつ救われていく様子が、時にコミカルでかつ繊細に描かれて、向かいに引っ越してきた家族の奥さんの「あなたって死ぬのが本当に下手ね?」と笑い飛ばすような明るさや、いい意味での厚かましさが否応なく主人公を変えていくことろなんか、見ていて清々しい気分。その様子には、ユーモアがあり、スパイスもあり、ウィットに富み、それでいてとてもフェアだと思った。
とても観後感がよくて、ついうっかり「ほっこりと心が温まる」なんて言葉を使いたくなってしまうくらいにやさしい気持ちで映画を見終えることが出来た。これは掘り出し物。身近な人に積極的に薦めたくなる作品だった。
あなたの周りには優しい人がたくさんいましたよ。
不器用で頑固で、共同住宅の規律に守らない隣近所にうるさいおじさん。あんな人と付き合いたくないし、話したくもない。そんな彼の子供時代から今に至る話を彼自身が淡々と話すとき、彼という人間にもそれなりの人生があったんだなぁと目頭が熱くなった。なぜあんなに何度も何度も妻の所に行くのか。他人のやることにがなり立てるのか…。彼は、人が面倒臭いことを率先してやる男だ。
自分のことより他人のことを進んでやる男。もう少し人と人の付き合い器用であれば好かれたのに。妻の死後、そんな男に話しかける2人の娘をもつ女性が現れるしだいに、彼女と大笑いをするまでにもなる一人の男。最後は、心臓肥大が影響したのか、自分の寝室で死に至るわけだが。その女性に遺言めいたものを残す。泣けた。
嫌味のない難解でもない単純な心温まる映画であった。
しかし、男のキャラが、若干ぶれてしまっている。近隣の女性からもらったペルシャ料理のタッパーに感謝のメモ。公道での運転教習等。
素敵なラブストーリー
オーヴェとソーニャの素晴らしいラブストーリーでした。
さまざまな場面で挿入される2人の歴史がとにかく素敵です。ソーニャのためにスロープを作ったり、最高です。
ソーニャはチャーミングで人格的にも完ぺき。ちょっと出来過ぎかなとも思ったのですが、ソーニャの負の面はオーヴェが背負っていたのかも、と大胆に推測してみます。
事故のことは、ソーニャの代わりにオーヴェがめちゃくちゃ怒ってくれたから、ソーニャは怒りに囚われることなく、エネルギーを未来に向けられて、改めて自分の人生にチャレンジできたのではないかな。
ソーニャの怒り・嘆きをオーヴェが図らずとも背負ってくれた。確証はないけれど、2人のパートナーシップを見ているとなぜかそんな気がしました。
若いころからオーヴェはぶっきらぼうで不器用。なので、序盤はなんとなくオーヴェにソーニャは不釣り合いかな、と思っていました。しかし…いやいや互いを補い合うベストカップルでした。
オーヴェはちょっとアスペ入ってますが、火事場に飛び込み人を救うような優しくて勇敢な男ですしね。聡明なソーニャはすぐに彼の魅力を見抜いたのかな。
ソーニャを失い、一時的に腐ってしまったオーヴェですが、隣人パルヴァネと子どもたちのと出会いで、図らずとも再生していきます。
パルヴァネの子どもたちとの触れ合いなどを見ていると、ソーニャとの間で不運にもできなかった子育てをしているよう。なんとなくオーヴェの中にソーニャが生きているように感じました。
再生していく晩年のオーヴェを見ていると、ソーニャとの間で培った愛を、周りの人たちに配り直しているようなイメージを抱きました。愛が2人だけで完結せず、世界に還元されているようで、なんとも豊かな気持ちになりました。
しかし、オーヴェは最後まできちっと生きれてよかった。自殺が成功していたらあの世でソーニャに振られるからね。
いい人生を観させて頂きました。オーヴェのおっさん、マジ幸せです!
頑固な主人公が、後半たまらなく愛おしく見えてくる
<寺田心くんが試写会ゲストに!>
先ずは試写会ゲストの寺田心くんの可愛さに、観客から黄色い感性がこだましました。 開口一番「ひとりぼっちなのに幸せってなんだろうって考えた」と大人顔負けの感想を述べると客席からうなり声があがりました。さらに「映画の中で“誰もが死からは逃れられない”という言葉があるんですけど、僕もあらためて一日一日を大切に生きようと思いました」という感想に、会場からは「おおーっ」と感嘆の声が。
トドメは、「印象に残ったシーンは?」と聞かれた心くんが、「主人公のおじいさんが、死んだおばあさんの衣装に残った香りをかいで、懐かしんでいるシーンです。」「ぼくも急にお母さんのことを思い出して、淋しくなりました」と答えてくれたことです。
なんてかわいいコメントをする子なんだろうと感心しました。こんなこと言われると、女性の観客なら胸がキュンと締め付けられますね(^。^)
<いまスウェーデン映画が熱い!>
『リリーのすべて』がアカデミー賞など、助演女優賞を受賞するなど、世界的に注目される存在となったスウェーデン映画界。苦いユーモアに、やさしさと悲しさを込めたストーリーが人気の秘密なのでしょう。本作も世界200万部発行のベストセラーが原作だけに、予告編で感動しました。
本作は、妻を亡くして生きる希望を見出せなくなった頑固な老人が、隣に引っ越してきた家族との交流を通して心を開いていくヒューマンドラマです。
寺田心くんが指摘したタイトルの矛楯。なんで幸せなのにひとりぼっちなのと改めて聞かれると、なるほど、おかしなタイトルだなとは思います。ただ本作を見ていると孤高な主人公でも、近隣の多くの住民に支えられて生きていることが分かります。そこが見えてきたら、羨ましいくらい日々を幸せに過ごしていることに気がつくことでしょう。他者がいてこその己の人生。ハンネス・ホルム監督は、オーヴェの悲喜こもごもを通してシンプルな真実を浮かび上がらせてくれました。べたべたせず、たんたんと。その節度に満ちた語り口が好もしい感じられました。何より、妻との出会い、愛を育んでいく回想場面が、実に素直でほほ笑ましく、心を揺さぶられることでしょう。夫婦の愛の描写と新たな愛情に包まれていく姿のバランスも絶妙です。
主人公オーヴェ役のラスゴードが、全身からにじませる頑固で古風な男の意地と悲哀にも、ぐっとくることでしょう。取るに足らぬ人などいません。見終わった後は素直にそう思えました。
余談ですが、劇中に登場する主人公の「宿敵」の野良猫ちゃんの、追い払おうとしても動じない大物ぶりにも注目です。あんなにネコ嫌いたぜったのににゃ~、なんてね(^^ゞ
<物語は…>
主人公のオーヴェは、愛妻ソーニャが死んでからといもの、頑固ぶりは増すばかりでした。例えば、共同住宅地域内の規則厳守を要求するあまり、自治会長の役を降ろされてしまいます。何しろ自動車の乗り入れ禁止では身体をはってまで車を止めるのです。当然タバコの吸い殻のポイ捨てだって見逃しません。見つけ次第徹底して怒鳴り散らすのです。たとえ市の職員が公用で訪ねてきたとしても容赦はしませんでした。そんな規律に厳しく頑固なオーヴェのキャラクターが可笑しかったです。
また親子二代・43年間、現場で叩き上げた鉄道局職員の仕事も、管理職の若造に時代遅れの役立たずと、解雇されてしまいます。餞別はシャベル1丁でした。失意のオーヴェでしたが、墓参の時だけは、寂しい気持ちを素直に吐露できます。妻への祈りを捧げていると、もうこの世に未練が無くなって、ソーニャの元に旅立ちたいという気持ちがこみ上げてくるのです。
けれども、ソーニャ彼らのもとに旅立とうとする度、必ず邪魔が入るのです。その絶妙すぎるタイミングには、毎回笑ってしまいました。その主なきっかけとなるのが、向かいの家に引っ越してきたイラン人家族が何かにつけて、頼ってくること。
一家は引っ越し早々にからして、オーヴェの家の郵便受けに車をぶつけてしまい、そのためオーヴェは自殺どころではなくなってしまったうのです。
怒り心頭のオーヴェは、文句を言いながらも、自分で車を運転して駐車場にきちんと停めてやり、さっさと自分の家に戻ってしまうのです。親切なのか嫌味なのか。他人もきちんとしないと気が済まない性格なのでした。そんなところが頑固親父の面目躍如であり、いろいろ面倒を頼まれてしまうと、仕方なく自殺を延期してしまうオーヴェなのでした。
一家のなかでも、妻であり母親のパルヴァネは、料理上手な妊娠中の母。オーヴェとは真逆の人見知りしない性格で、オーヴェの心の内に貯めていたものを、優しく聞き出していくのです。おかげで、ふたりは仲良くなり、頑固なオーヴェの心も次第に開かれていきます。ふたりの会話によって、オーヴェと亡くなった妻ソーニャの出会いや、自治会活動で規約作りに奮闘し合った盟友との仲直りなど、彼の過去が語られていく展開に。彼の物語を深く知るにつれ、変人と思っていたオーヴェがたまらなく愛おしく思えてきました。
気がつけば、妻に先立たれて孤独だと思っていたオーヴェの廻りには、彼を慕い頼りとする住民で溢れていたのです。
まるでパネルを積み重ねるように描き出されるオーヴェの日常の真実には、人ひとりが生きる意味、そしてそれを輝かせるもの感じずにいられないでしょう。
年末に、疲れた心を温かくさせてくれる良質の映画としてお勧めします。
邦題にはピンとこないけど
機内で観ました。
笑えてくる程にいつも不機嫌な頑固爺さん、オーヴェ。
面倒くさいので近所の人は敬遠しますが、新しくこの街にやってきた、快活な女性、パルヴァネが彼の強固なカラをぶちやぶります。
相手を思いやりながらも言いたいことは言うという、誠実なストレートさは見ていて気持ちが良いです。
天と地がひっくり返っても、相容れようがないと思う相手でも、結局お互い偏見の目で見て、こいつは無理だと思い込んでるだけだったり。
せっかく素晴らしい関係を築くことができるかもしれないのに、もったいない。
オープンに、誠実に過ごしていれば、いいことがたくさんやってくる。
頭ではわかっててもなかなかできないことを、教えてくれた映画です。
最終的には隣人に囲まれるオーヴェはひとりぼっちではなくなるので、あんまり邦題にはピンときません。
イラン系のパルヴァネと、イメージ通りの北欧爺さん、オーヴェの、一見交わりのなさそうな2人の交流、こころあたたまります。
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