「それぞれの思い遣り」ナラタージュ movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれの思い遣り
登場人物それぞれが、愛に悩んでいる。
泉は孤独を救ってくれた葉山先生を初恋に近い形で好き。
小野くんは心が葉山先生を求めている泉の本心に気付きながらも、泉に振り向いて欲しい気持ちでいっぱい。若さもあり、やや一方的に泉を求めるけれど、泉に自由でいて欲しい気持ちとの間で葛藤している。
葉山先生は、心を壊した妻との関係性に傷つきながらもまだ何かできないかと抱えたまま、生徒である泉の気持ちに癒される。恋愛感情以上に、泉の存在に救われていた。
それぞれ誰かを想っていて、その形は相手が求める形で与えたり与えられたりがとても難しい関係性。
忘れた方が良いのかな?
そんな中で泉は揺れ動くから、小野くんはとても傷つけられたと思う。
最初にあげた靴を、最後に取り上げる。
足枷のような存在でありながら、そうはなりたくないという気持ちがよく現れる画だと思った。
小野くんも、泉も、報われない恋。辛いよね。
葉山先生に諦めがついてないのに、小野くんと付き合うと自分で言い出した泉は、小野くんにとってはとても残酷だけれど、妻と切れていない葉山先生を思っていても仕方がないし、区切りをつけようとしたのは確かだと思う。でも、別の誰かではどうしても埋まらない。
葉山先生も人を助けたい気持ちが強いからこそ、泉の弱さに気付いていて、自分も弱くて、泉をなんともない存在にできない。小野くんと泉がうまくいっているのなら、そこに立ち入ろうとはしない、まともな自制心は働いているのだが。
全員が自制と本心で揺らいでいる話だからこそ、
「最後にもう一回だけ部屋に行きたい」これ、いる?
と思いつつ、これが効いてくる。
ここで葉山先生と泉両方が、葉山先生の妻という存在がなかったとしたら大好きだと実感するからこそ、最後にしようと懐中時計を貰って先に家を出る泉と、泉を見送りに路線バスの線路の側に出てくる葉山先生の気持ちが最期の最後だけ窓越しに通じ合う。
懐中時計の裏には幸せでいて欲しいか。
理性で一緒にいられる妻も、苦しいと思うんだけどなぁ。ハッキリしろ松潤。
泉の気持ちに気付いていても、最初にキスなんてしなければ、泉はこんなに何年もとらわれずに小野くんと幸せになれた可能性が高い。
小野くんも犠牲者。
なんなら妻の心も松潤のそばにいたが故にでないのか?
全員が苦しい恋をするお話。
泉が、小野くんを受け入れる時は痛みもありそうな表情なのに、葉山先生の時には全然違う。
何年自制していても、最後に部屋に行ってそんな関係性になっては、なし崩し。
結局何年かしたら2人はまた始まるんだろうなと思わずにはいられない。
葉山先生もあのあと、妻とやり直せたとはとても思えないな。よぼよぼになっても泉を思い出していそう。
こういう、誰かにまだ未練を抱える人を好きになったり、巻き込まれてしまう人達は大変だ。
受け入れて結婚すると言ってくれる婚約者が後々結局苦しむのでは?泉は結婚までに必ず、葉山先生を思い出に変えなければ相手を苦しめるし、そうできそうなラストシーンだけが希望だった。
執着に揺れつつも、泉を手放した小野くんの対応は、正しかったと感じた。