「冷たい。」ナラタージュ puccinoさんの映画レビュー(感想・評価)
冷たい。
終始物静かにどちらかといえばゆっくりと話が進んで行くのに
140分が長く感じなかったのは不思議です。
主演の二人の表情や台詞、動き佇まい、語りが丁寧で集中して見入ってしまいました。
雨のシーンが多いのですが、映画を観に行った日も一日中雨だったので
世界観に入りやすかったのかな。だけど余韻というか何か残るものが希薄。映像や照明が綺麗すぎて人が少し冷たい印象。もっと人間くさいというか汗とか鼻息とか呼吸とか匂い立つものが欲しかった。
最後ようやく二人が一つになったシーンでそれがあればもっと感情が盛り上がったのに。語りが多い。画面で伝えて欲しい。決してもっとエロいシーンが観たかった!。って言ってるわけじゃないですよ。
二人ともどちらかというと口数が少なく地味で目立たないキャラクター。それには訳があるのですが…
自分の想いを葉山先生は気付いているだろうと思い込んでしまっている高校時代の泉と、気付いているのに言葉で返さない葉山先生。
なのに卒業の日のあの出来事の後に「ごめん…」はないよ。
不器用すぎるよ。わかってないな葉山先生。いつも「ごめん」言い過ぎ。この先生、泉といい奥さんといい女性の気落ちを推し量るのが苦手な性格だな。
曖昧な空気のまま時間が経っていった結果、久しぶりに再会してから衝突や爆発が起きてしまう。
あの時先生はこう言った、あの時先生は何も言わなかった。とか。
あの時の感情や発言や行動はなんだったのって。
どうして言わせるの?わかってるくせに!っていう怒りの感情も出てきたり。このヤキモキした泉の気持ちはわかります。
やはり相手に対する自分の想いや気持ちはちゃんと言葉にして
相手の目を見てきちんと伝えることが大切なんだなって思いました。
でもなかなか言えないんですよね。本人を前に。タイミングとか。
勇気いりますよね。生徒と教師の関係だし。泉は思いを手紙に書いて渡そうとしてたけど出来ないまま思い出になっているし。
早く気持ちを伝えていれば恋は実ったかもしれないし、すぐに終わっていたかもしれない。結果が早く出て後々苦しまなくて済んだかもしれない。でもそれは誰もわからない。
伝えられないままだと想いだけがどんどん募ってしまう。そしていづれ壊れてしまう。
好きな気持ちを素直に相手に言葉にして伝えることがどうしてこんなに難しいんでしょうね。
伝えられた方もその気持ちに誠心誠意応えないと。男なら。
最後の終わり方はいいですね。次の恋の兆しか。前に進まないと。