劇場公開日 2017年5月20日

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「黒澤映画へのオマージュのように見えるが、、、」たたら侍 まるちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0黒澤映画へのオマージュのように見えるが、、、

2017年5月25日
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泣ける

悲しい

怖い

パンフやチラシで紹介されていたように、モントリオールの審査員長や評論家の佐藤忠男さんのコメントを読んで、我が意を得たり、の想いがしました。
海外映画祭の審査員などにとって黒澤作品は研究し尽くされています。
最優秀賞受賞は、単なるオマージュ作品には与えられないはずです。
新しいアプローチ、とありました。私もそれを強く感じました。
最近の邦画の特徴として脚本や演出が、最後にハッピーエンドであり、解りやすく、泣けて、楽しませるものばかりです。
しかし、世界で作られている映画は、そんな解りやすい感動ものばかりではありません。
邦画のプロットはアメリカ映画のそれによく似ており、皆がオリジナルだと思っている演出やカット割りなどはアメリカ映画の影響を強く受けています。モノマネとは言いませんが、それらの価値観の中でこねくり回しているだけでプロットは変わらず楽しませ方が違うだけ、と言ったら言い過ぎでしょうか。
その証しに、近年の海外映画祭では、邦画の受賞は随分少なくなりました。
時代劇も黒澤時代のように受賞していません。
彼ら映画祭のいわゆるプロから見れば、アメリカ映画のモノマネ作品は受賞など程遠いのです。
たたら侍は、最近の時代劇の中で、とても意欲的と言えます。日本の歴史を知らないと中々解らないのは仕方ないとしても、他のサイトで殺陣シーンの中で血しぶきが出ないことを、リアリティが無い、などという書き込みがありました。
血しぶきは、黒澤作品の中では椿三十郎のラストシーンで、1シーンだけ初めて使用され話題を呼んだことはありますが、リアリティを追求すれば実際には血しぶきなど飛び散らないのです。
みんな、ハリウッド映画の見過ぎ、又はゲームのやり過ぎで感覚が麻痺してしまっています。
黒澤映画は、リアリティを追求し、今も世界中の映画人に影響を与えている日本の誇りです。
その黒澤映画には、一度だけ、血しぶきが使われているだけなのです。
たたら侍の脚本は、邦画の有りがちなストーリーラインを逸脱していきます。
だからこそ評価されたのです。
過去の海外で高評価された主人公の中には、最後までどうしようもない奴や、救われない奴も沢山います。もどかしさだけが残ってしまう作品や、愕然とした感情のまま映画館を後にする作品も少なくありません。
ノートルダムの鐘など、心に突き刺さる作品ですが、救いようの無い気持ちになりましたがいろいろ考えさせられました。
映画は、娯楽ですが、多種多様な作品に触れたいと思っている私にとって、何度も見返したくなる深い作品でした。
最近の日本のドラマや映画のように、観客に媚びを売らず、骨太な作品を製作してくれた皆さんに感謝したいです。
戦国時代の普通の農民の成長物語ですが、現代に生きる私たちは伍助を笑えないのでは、と思います。何だ、伍助ちゃんとしろ!と思いながらもし自分だったら、と考えました。
それこそ、映画のヒーローのように上手く運ばないのが人生。失敗の連続の人生。そこからどう図々しくも逞しく生きていくのか、が大事なんだよ、と背中を押されるような映画です。
人生はそんなもの。
こんなに示唆に富んだ映画は近年中々無いのです。

黒澤映画のようだけど、新しいアプローチというところが、とても硬派な映画と言えます。

こんな品のある映画をEXILEが作ったというのですから素晴らしいの一言です。
マーケティングありきの邦画ばかりの中で、こだわりから何まで異彩を放っていますね。邦画界の皆さんも頑張って欲しいものです。

EXILEのアンチか知りませんが、心無い書き込みをしているサイトが目立ちます。
書き込むにしてもそれなりの品格を持って欲しいですね。ろくに黒澤映画も知らずに書き込みしているのでしょうが。

海外映画祭に挑んで、評価された映画の見方の参考になれば幸いです。
よくある邦画では無いですが、色々人生を考えながらご覧になればズシンときます。

楽しみながら、考えさせられます。
是非映画館はへ!

まるちゃん