「見どころの多い撮影。演出にテンポ感があれば・・・」たたら侍 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
見どころの多い撮影。演出にテンポ感があれば・・・
戦国時代の末期、織田信長が台頭している頃の話。
奥出雲に、玉鋼(たまはがね)と呼ばれる最強度の鉄をつくる人々の村があった。
彼らは「たたら師」と呼ばれ、砂鉄から製鉄をしている。
たたら師たちの長は「村下(むらげ)」と呼ばれ、伍介(青柳翔)はその村下の家に生まれた。
父親が祖父から村下を継ぎ、村下としての修行を積んでいるそんなある日、仲間が出来上がった玉鋼を運ぶ途中、山賊に襲われてしまう。
村を守りたい伍介は、玉鋼の買い付けに来ていた近江商人に頼んで、都へ出て侍になることを決意する・・・
といったところから始まる物語。
その後、戦で人が次々に死ぬところをみた伍介は失意のもと村へ戻るが、狡猾な商人(津川雅彦)が村を守るといって、火銃(ひづつ)をつくり、村びとたち自らの手で村を守るように勧める。
そのうち、村は砦のような形になり、件の商人は野武士たちを雇い入れて、「村を守る」という言葉の下に、村を掌中に収めていく・・・
と展開する。
なかなか、いまの時世を反映したような物語で、「刀を抜くときは、死ぬことを覚悟するときだ」と伍介に諭す領主の言葉もあり、骨子としては悪くない。
なんだけれど、演出のテンポが悪いのか、どうも観ていて気が散じてしまう。
たぶんに、時代劇とはこんな感じといった、重厚というより鈍重な感じで演出しているのだろう。
とはいえ、見どころも多い。
フィルムで撮って4Kデジタルで仕上げた画面は、デジタル撮りの画面と比べると格段に色調がいい。
微妙な色彩、特に人間の肌合いが違う。
ふんどし一丁でたたら吹き作業をする男たちの肌合いは素晴らしい。
また、たたら吹き作業は実際に行っているとのことで、それらを捉えた映像は、やはり本物の力がある。
さらに、奥出雲にオープンセットで作られたたたら村。
周囲の自然と一体感がよく、自然を背景にした撮影に活かされている。
なので、これで演出にメリハリが効いていて、あと10分ほど短ければ、もっといい評価ができるのだけれど。
なお、エンドクレジットの背景の映像や、クレジットの途中にも1エピソードあるので、最後まで観ることをお勧めします。