「恐怖映画というより心の傷と家族愛と再生の話」ソムニア 悪夢の少年 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
恐怖映画というより心の傷と家族愛と再生の話
総合:70点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:75点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
最初は何か怖い事が起きているけれどそれがどうも説明不足で全体像が掴みにくく、あの蝶が何かとか怪物が何かとか、少年とどう関係があるのかということが気になりつつ観ていた。怖さもそれなりに出ていたし演出も悪くないのだが、夫までどうにかなるし状況がわからないまま物語は進みこのまま終わるのかと危惧していた。もしそうならばただの怖い雰囲気だけで終わる作品に過ぎないと思っていた。
そうしたら結末近くに一気に状況がわかってすっきりしたし、虐めっ子がちょっとものを壊したことで殺されるなんて随分と酷い話だと思ったが、子供の無意識が行っているという事なら納得できる。子供がキャンサーをキャンカーと間違えて読むのもいかにもありそうだし、そこから生じた誤解というのも良く出来ている。
また怖いだけの話でもなく、むしろ家族の愛情と再生の話でもあった。子供を亡くした母親のジェーンが、子供と再会するためにコーディの能力を使用してしまう場面がある。このジェーンの行動が悲劇に繋がるのだが、子供を事故で亡くしてしまい未だに心理療法に通い続けているくらい心に傷を負っているのだからそれはやむを得ない。超常現象が起きていて目の前に自分が長年欲しがっていたものがあるのに、誰がその後に襲ってくる怪物のことを予想してそれを拒絶出来るだろうか。逆に言えば自分でどうにも止められないくらい傷が深いのだからこそ心理療法に通っているのだし、子供を亡くした母親の感情は理屈で簡単に制御できるものではない。
だからこそジェーンは自分の息子の代わりにコーディを養子にしたし、偶然コーディの能力を知って彼を利用したし、その後に真実を知り自分の間違いを悟り良心に従い行動した。誰が彼女には心の傷を癒す何かが必要だったし、心の傷を過去のものにして愛情を良い方向に持つことが出来た。
コーディも他の誰もが解決出来なかった彼の能力の問題を、ジェーンが真実を突き止め理解し愛情を注いでくれた。コーディは自分の意志でそうしたのではないとしても、結果的に人を殺している。前の里親はコーディの能力に気が付き彼を殺そうともした。自分も観ていてコーディの力は危険だから殺されても仕方がないと思ったが、それでもジェーンは彼を救った。
前の里親の事件と夫が消えるなど大きな犠牲を払っているので必ずしも大団円という結末ではないが、人は間違いを犯すものだ。そのうえで過去に区切りをつけて希望を持って未来に向けて進むことが出来るのならば、最高の結末ではないのだとしてもそれは良いのではないか。