「イマイチの連続は地獄」こどもつかい 隊長62さんの映画レビュー(感想・評価)
イマイチの連続は地獄
基本的に批判にしかならないので、褒めるべき点を2点先に挙げる。
黒マント役のタッキーは、演技がいい悪いというのではなく役としては合っている。端正な顔立ちだから「人形が人になったら」という視点で考えると納得できる人選だ。
もう1点はオリジナルの脚本で勝負したこと。原作映画化は問題ないが、原作と比較する必要がなく純粋に見ることができる映画の存在は大きいと思う。
以上でポジティブな評価は終了する。
ダメな点を紹介していくが、まずこの映画は全く怖くない。
描写で言えば、一番怖いのは恐らく冒頭の娘をベランダに出した母の死に方で、後は至ってマイルドな表現に終始している。
またシナリオは王道(過去を調査して因縁を探る)だが、盛り上がりが全くない。
そして最大の問題点はホラー映画にとってとても重要な「日常」の描き方が甘すぎることだ。
個人的にホラー映画は最も日常の描き方が求められるジャンルだと思う。それはホラー自体が非日常の出来事であり、その非日常はしっかりとした日常が繰り広げられているからこそ成立する。観客が作品中の日常に「ん?」と疑問を持ってしまう事態はできる限り避けなければならないのだ。
この「こどもつかい」はその日常の描き方が雑すぎる。
例えば新聞記者は危険が伴ったり慎重な取材が必要だったり、衝撃的過ぎたりする話題、事件でない限りは一人で行動する。ついてくるとすればカメラマンぐらいだ。今回の母が一人不審死した程度では考えにくい。また先輩が守役として同行するケースは新人記者ならあり得るが、あの記者が新人だとする描写は見えないので説明不足だ。
また主人公が身を置く保育園の現場はひどい。虐待を見かけたら通報義務があるし、迎えが来ないから「じゃあ担任の先生が送る」なんてことはない。そもそも保育園は勤務している人が預けられるので勤務先にいるかもしれない。また普通は緊急連絡先としていくつか連絡がつく人を登録しなければならない。お母さんとつながらないから「じゃあ送る」とはいかないのだ。
保育士も職業意識に欠ける。自分と同じ境遇の子にシンパシーを感じるのはそれなりに理解はできるが、養護施設の職員から離れてしがみつく子どもを冷たく突き放しはしないだろう。まず己の無責任な発言を謝るはずだ。謝罪はクライマックス辺りで出てきて恐らく重要なシーンだったはずだが、余りに遅すぎる。職業はその業界を研究しなければいけない悪い意味でのモデルケースにこの映画はなっている。
ほかにもトミーがやばい奴だったシーンがあっさりしていてヤバさが見た目だけになっていたり、タッキーがレン君に裏切られたり子供たちに邪魔されているときのガッカリ感、怒りが全然伝わってこなかったりなど問題点は山ほどある。
ホラー映画はこういう風に作ってはいけないというお手本、そして何より清水崇は面白いホラーは取れない。そう感じさせられた120分だった。