「マッチしない人生、マッチする交流」コンフェッション ある振付師の過ち 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
マッチしない人生、マッチする交流
NYで悠々自適な一人暮らしを送る元バレエダンサーで今は振付師のトビー。そんな彼の元に、マイクとリサの夫婦がバレエの歴史の取材にやって来る。
が、どうも取材内容がヘン。やたらと60年代の女性関係について聞く。
やがて夫婦はある亡き女性の名を上げ、マイクはその息子。トビーが父親ではと訪ねてきたのが本来の目的だったのだが、トビーは断固否定する…。
ブロードウェイ上演の戯曲を、原作者自ら映画化。
故に、トビーの自室ワン・シチュエーション、主な登場人物も3人で進められていく。
こういう作品の場合、キャストの演技に惹き付けられないと退屈になってしまうが、パトリック・スチュワート、カーラ・グギーノ、マシュー・リラードが熱演。
ウェルカムな性格だが、ベラベラベラベラよく喋り、少々自分に酔っているような時々面倒臭いトビーを、スチュワートがさすがの名演。
グギーノは抑え目の好助演。
目から鱗だったのは、リラード。コメディの印象が強かったが、迫真のシリアス演技を披露。
本来の目的が分かってから、場の雰囲気が一変。
ピリピリ、険悪。
性格が全く合わないトビーとマイクは感情爆発。マイクはDNA検査をする為、無理矢理トビーの口内の粘液を採取し、部屋を飛び出す。
感情的な夫を目の当たりにしてショックを受けるリサ。最近、夫の中が…。
トビーが突然打ち明ける。実は、マイクが自分の息子である事を。
昔、マイクが載った新聞記事を見て涙が出た。ずっと今も大事に持っている。内緒で学費も出した。
なら、何故名乗り出ない…?
自分は妻子を捨てた身。今更名乗り出て何になる…?
密かに我が子を思いやるトビー。
そんなトビーを気遣うリサ。
リサの心情を温かく包むトビー。
その夜、マイクがリサを迎えに戻って来て…。
再び感情的になるマイク。
トビーが遂に打ち明ける。
一人で自由に生きてきたトビーだったが、人の温もりを欲していた。
マイクもまた父親の温もりを欲していた。
やっと父子のわだかまりが解け…。
が、皮肉な事実が。
やっと巡り合ったと思った親子関係や人生が上手くマッチ(=原題)しない。
しかし、思いがけず触れ合った交流はマッチ。自分の人生に向き合い、見つめ直す。
日本未公開の誰も知らないような小品だが、なかなか見応えあり、個人的にはマッチした。