「よくあるタイムスリップものだし荒唐無稽な話ではあるが、笑いあり、涙あり、感動ありの歴史エンタメとして良く出来ている。」本能寺ホテル もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
よくあるタイムスリップものだし荒唐無稽な話ではあるが、笑いあり、涙あり、感動ありの歴史エンタメとして良く出来ている。
①本能寺の変を事前に知った信長が逃げずに本能寺に留まることを選んだのは、未来の平和な日本の写真を見て、自分が本能寺で死ぬことで未来の日本が平和(太平)になると悟ったから、という解釈がフィクションながら新鮮。実際の現代の日本が信長の望んだ姿になっているかは別として。それは現代の日本に住む我々が自分で考えなければならないことだけど。②何故羽柴秀吉があんなに早く中国大返しが出来たか、という謎に新しい解釈を加えたのも歴史好きとしては面白かった。③綾瀬はるかは(今まで観た中では)『海街dairy』以外は感心したものはなかったが、本作ではなかなか宜しい(横顔美人ではないのも分かってしまったが)。織田信長に仄かな恋心を抱くようになるというのも丸々フィクションながら微笑ましくて宜しい。濱田岳扮する森欄丸を見て「イメージと違う」というのも映像で見せる映画ならではの歴史的楽屋落ちでクスッとさせる。④堤真一は適役好演。まあ、どんな役させても安心して見ていられるけど。⑤近藤正臣も京都人だから京都弁も安心して聞いていられる。年取って良い役者になりました。若い人は、昔『柔道一直線』で足でピアノを弾いてたなんて知らないでしょうね。⑥平山浩行も最後はふられる役だが感じの良い好演。京都の料亭の息子なのに京都弁を話さないというのは不自然と言えば不自然だが、ご贔屓の役者さんなので大目に見ましょう。関西人の私としては、逆に変な京都弁を使われた方が困るし。⑦大阪愛が無かったのが致命的だった『プリンセス・トヨトミ』(映画の方)と同じ監督作というのは後で知ったが、本作は京都愛は少々感じ取れた(個人的には奈良県人である私は京都は好きではないですが)。⑧脚本の相沢友子の他の脚本・脚色映画『重力ピエロ』『プリンセス・トヨトミ』『脳内ポイズンベリー』『三角窓の外は夜』(これはひどい)はどれも感心しなかったが、本作ではそこそこだったのは巷間言われるように万城目学の企画・原案があったからかもしれない(この映画を観るまではそんな話しも知りませんでしたが)。⑨ともかく、新解釈もなく通説の範囲を出なかった三谷幸喜の『清須会議』より面白かった。