「伝統と異端と」ミルピエ パリ・オペラ座に挑んだ男 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)
伝統と異端と
オペラ座の芸術監督になった男の初公演までの40日間を追った話
バレーのいろはも知らない自分は、ベンジャミン・ミルピエがナタリーポートマンの夫だくらいしか知らなかった、本作は彼の現体制への不満、バレーにかける情熱はヒシヒシと伝わってくるドキュメンタリーでした。
ダンサーの発掘や伝統に縛られない発想、ダンサーへの気遣いなど、異端児と言われている割に優しくていい人って感じだった。
作品全体がお洒落。出てくるのは美男美女ばっかりだし、音楽はカッコいいし、ベンジャミンは爽やかだし、屋根の上でノートパソコンいじったり、ドキュメンタリーと言いつつも映画のような出来だった。
カメラ何台で撮ってるんだろうとか、編集点決めながら撮ってるんだなとか、本人たちは絶対カメラ意識しちゃうだろうなとか、余計な事を考えてしまった。
作品に集中できなかったのか、延々映される練習と裏方の奔走を上手に演出、編集していて密着感はあるものの、ドキュメンタリーとしての作品を意識しているような気がして現実味があまり無かったように感じた。
ストライキで講演が中止になったりするのが当たり前だということも初めて知れてた。
ストを起こすのは劇場スタッフな訳だが、ダンサー達は一生懸命練習してやっと来た晴れ舞台を台無しにされて平気なのだろうか。
ストが解決したとしても、彼らと同じ現場で仕事をするのに抵抗はないのだろうかなどと考えてしまったが、お国柄なら仕方ないのかも知れない。
作品を通してダンサー達の努力と舞台上の演技は素晴らしく思ったし、ミルピエがどんな人物なのかが知れてよかった。
個人的にはマネージャーの女性が馴れない仕事やスケジュール管理などをしていて時折見せる困った顔がとても可愛かった。
邦題のサブタイトルが「パリ・オペラ座に挑んだ男」とあるが、芸術監督なら誰もが挑むだろうし、苦労しない人なんていないと思う、ミルピエだけが特別だとは思えなかったので、前任者達の事も配慮してもらいたいタイトルだなと思った。
劇中セリフより
「喜びが無ければ、人生に何の意味がある?」
まずは自分が楽しむ事が第一
好きこそものの上手なれ、好きでやってる事なんだから楽しまないに越したことはない。
好きな事を好きなだけ出来るように成りたいと思った。