「罪を食べてでも生きたい」東京喰種 トーキョーグール 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
罪を食べてでも生きたい
こちらも人気コミックの映画化らしいが、毎度の事ながら…。
内容もほとんど知らず、大まかな概要だけの漠然としたイメージは、『寄生獣』×『亜人』…?
人間を捕食する“喰種(グール)”と呼ばれる怪人が潜む東京。
ある日突然喰種に襲われ、その臓器を移植され、半人間半喰種となってしまった大学生のカネキ。
喰種と彼らを駆逐する組織“CCG”の戦いに巻き込まれていく…。
うん、確かに『寄生獣』×『亜人』だ(笑)
でも、これはこれで特色があり、面白味もある。
それに、何の予備知識や固定概念もナシだったので、なかなか面白くも見れた。
まず、喰種とは何ぞや?
見た目は人間とは変わらない。
が、人間しか食べる事が出来ず、人間の食べる物は食べられない。要は、人間が野生の動物たちが食べる物を食べられないのと同じ。
本性を現すと、赤い目がギョロリとなり、身体から“赫子(かぐね)”と呼ばれる触手のような器官を鞭のようにしならせ、戦う。
身体能力も超人的で、骨折程度ならすぐ治る。
『寄生獣』も『亜人』もそうだけど、多少似通ってはいるが、あれやこれや特異な存在を創り出すもんだ。
けど、この赫子がちょいと気持ち悪く、グロい描写もそれなりに。
本作はキャストの熱演・怪演が目を引く。
原作者たってのキャスティングだという窪田正孝が見事。
半喰種になる前のちょっと冴えない何処にでも居そうな青年像は、何だか素の窪田クンを見ているよう。
半喰種となり、自分の中の喰種が覚醒する表情や目の凄みはなかなかのもの!
それでいて、自分の運命への葛藤や苦悩も体現。
若手実力派の肩書きに偽りナシ!
喰種の少女トーカ役の清水富美加はイメージ一新。
長かった髪をバッサリ切り、クールで言葉遣いも荒いドS、アクションも披露。
彼女のまた新しい一面を見れるとは…!
だからこそ余計に、ああ、もう、惜しい!
そして、蒼井優。
カネキを襲った喰種の張本人で、カネキが喰種になってしまったのは彼女の臓器を移植されたから。
他の喰種の食い場を荒らす“大食い”という設定らしいが、物語の展開上出番は序盤だけ。
が、その怪演は一見の価値あり。
日本のこの手のコミック原作映画は、単純な勧善懲悪じゃないのが見応えある。
本作も然り。
人間=善、喰種=悪、もしくは喰種=善、人間=悪とはなっていない。
それぞれに良識ある者、悪しき者、正義の考え、立場などがある。
人間を喰らう喰種は確かに恐怖の存在だ。
己の食欲を満たす為だけに、人間を襲い、殺す喰種も居る。
その一方、“あんていく”の喰種のように、人間を襲わない喰種も居る。
勿論彼らも喰種なので食べなければ生きられないが、彼らが食べるのは、自殺した人間のみ。処理する前は悼むように手を合わせる。
喰種だからと言って、皆が皆、恐ろしい存在じゃない。平和に、穏やかに生きたいと願う喰種は大勢居る。
喰種から一般人を守るCCGは一見正義の立場のように思える。
が、捜査官の真戸は喰種を駆逐する為なら手段を厭わない冷徹・非道。喰種の赫子を改造したような武器で喰種を追い詰める様は狂気的でもある。(白髪に不気味な雰囲気、コミカルさを一切封印し、大泉洋が怪演)
その部下の捜査官・亜門は真戸とは違って真っ当な正義を持っている。
が、親交を深めた捜査官が喰種に殺され、激しく憎む。
その捜査官を殺した喰種というのが、トーカ。
彼女もただ猟奇的に殺したのではなく、ある復讐で…。
主人公が半人間半喰種という設定なのはありきたりかもしれないが、見る側としては感情移入し易い。
喰種の空腹感は人間の非じゃない。
食べなければ生きていけない。
でも、人肉を食べる事なんて出来ない。例え、自殺した人間の人肉でも。
自分は人間か、喰種か。
他者を殺めた人間も喰種も間違っている。
だからと言って、その為にまた他者を傷付ける事も正しいとは思わない。
が、理解しようとしない勢力からか弱い喰種母子を守りたい…。
何が善なのか、何が悪なのか、何が正しいのか、何が間違っているのか。
間違ってても、正しくなくとも、人間も喰種も、それぞれの守りたいものや己の為に…。
内容的に見応えあったし、赫子バトルも迫力あったが、でもちょっとアクション的にもスケール的にもこぢんまりとした印象。
Wikipediaで調べると、登場人物や展開などもっと複雑に交錯するようだが、本作はあくまで序章。
続編作れそうだが、あ、でも、清水富美加が…。
トーカ抜きでは話は進められないと思うので、う~ん、残念!(>_<)
(本作での新境地熱演は見事だったのに、出演した後で本当は倫理に反するような役は嫌だったと言われてもね…(^^;)