「キャスティング演技映像が素晴らしかっただけに…」東京喰種 トーキョーグール 猫の言いなりさんの映画レビュー(感想・評価)
キャスティング演技映像が素晴らしかっただけに…
東京喰種連載当初からのファンです。実写映画化にあたり、とても不安でいっぱいでしたが、スイ先生の呼びかけで、不安も期待に変わっての視聴でした。とても楽しみにしていた映画でした。
結論、それで?の一言です。期待をしていた分羽赫で頭を貫かれた感じです。
タイトル通り、キャスティング、演技、映像、本当に素晴らしかったです。なのにも関わらず、視聴後なんとも言えぬ気持ちで胸がいっぱい…。人の考えも様々だな、そんな気持ちでこれは読んで欲しいです。
まず私が引っかかったこと。キャラの引き立て方がヘタ、場面の切り替えが雑、尺を意識しすぎた結果、喰種特有の考察する余韻というものがない。この三つでしょうか。
キャラの引き立て方がヘタ、こちらについて特に気になったのは金木くん、錦先輩、亜門さん、この三人です。けして演技が下手とかそういう事ではありません。漫画の喰種で読んできた、私が知ってる三人ではなかった、それだけです。
まず金木くんですが、原作では知的に物事を考え、時にトーカちゃんをたしなめ、その場その場を考え動くキャラです。それがとても重要なポイントで、漫画ではそれを中心に物語が進みます。つまりわりと理性が強いんです。ですが、映画の金木くんは簡単に理性が飛びます。感情でよく動くキャラクターになってます。もちろん窪田さんの演技は文句無しに金木くんでした。リゼさんに襲われるシーンもよくここまで仕上げたなと心の中で拍手しましたし、冷蔵庫の食べ物食い散らかして吐くシーンや、珈琲を飲んで「美味しい」と泣きながら語るところなんかも涙ぐむほど。
でも根本的に映画の中での金木くんが、原作の金木くんと違うんです。
映画の金木くんは、その場の感情でよく動きます。ヒデが錦先輩にぶっ飛ばされて、バトルになり、金木くんがやり返したあとがとてもいい例だと思います。原作ではヒデを美味しそうだと思った自分に気がおかしくなりかけながらも、自制心でなんとか齧らず舐めずになんとか手を出しません。ですが映画だとヒデを助けに抱き起こした瞬間、理性が飛んでヒデから流れる付着した血を、顔中を舐め回します。鏡に映った自分の姿に少し固まりますが、本人はなんのこっちゃ。その直後に四方さんとトーカちゃんが登場しなければ食ってたに違いない。そう思わずにはいられないシーンです。
そして錦先輩、清々しいほど嚙ませ犬です。もう少し根性があって、もう少し強かったのでは?原作でもわりと嚙ませ犬ですが、それを遥かに超えた嚙ませ犬。初見の方が観ると、絶対「めっちゃ弱いヤツ」って印象になります。あなたトーカちゃんに一発蹴り入れられたくらいで逃げるたまじゃないでしょうに…。ここまで嚙ませ犬にしちゃうならそれなりの救済処置が欲しかったというのが正直なところです。彼女ちゃんとの話がカットされてるので、なおさらただの嚙ませ犬。
そして亜門さん。これが私が一番わからないところです。映画の亜門さんはとにかくボコボコにやられ、ダラダラ血を流し、よく吹っ飛ばされます。原作との印象が一番ギャップあるキャラです。亜門さん、あなた、もう少しいや、もっと強いよね?尺の問題があって、その方が話の流れが作りやすかった。それはわかっています。ですがトーカちゃんにあんなボッコボコにやられるのは……
そして金木くんとの例のバトルシーン。この時にも金木くんに違和感を覚えました。この頃の金木くんは自分の無力さを嘆き、トーカちゃんに稽古を申し出ます。つまり訓練したてのピヨピヨ喰種です。赫子も十分には使いこなせません。当然長い間対喰種と闘っている亜門さんに手も足も出ません。それをわかっていたから原作の金木くんは自分を足止め用員として、亜門に立ち向かいます。絶対倒せない、ならせめて足止めして二人のもとへは行かせない。でも自分は人間なんだ、絶対人を殺さない。
ですが映画だと、車で現場に向かう亜門に先制攻撃を仕掛けます。その時点で私の心境は(エエッ…)でした。だっておかしいですよね?映画の亜門さんめっちゃ弱いんですよ?原作の亜門さんなら車の事故ごときでは死にませんが、映画の亜門さんは「えっ死にそう…」って思いそうなほど、そんなに強くありません(なぜか車大破しても血は流れませんでした)。亜門さんが稽古をし、強くなるシーンはありますが、正直その程度では補えません。のちにバトルの決着が着きそうな頃、亜門さんの両手を赫子でグッサリ大穴空ける金木くんが「僕を人殺しにしないでくれ」と泣きますが、いやいや、普通なら君が車をひっくり返してビルに車を突っ込ませる先制攻撃仕掛けた時点で死んでるよ。とてつもない矛盾を感じました。
そして激しい先制攻撃仕掛けた金木くん。これも納得がいきませんでした。原作では亜門さんの前に立ち塞がり、とにかく二人のもとへは行かせない。その一心で亜門に立ち向かいます。映画ではどうでしょう。最初から殺す気満々の様な車大破の先制攻撃。なんなんだ…。二人のもとへは行かせない。その気持ちは原作も映画も変わらないはずなのに、この違いとは…。
そして場面の切り替え、こちらは尺を意識しすぎた結果、考察する余韻がなくなったというものと若干かぶってるのでまとめて失礼します。
原作を読んでる方はご存知と思いますが、東京喰種はとても考察が楽しい漫画です。一つ一つのシーンにしっかりと考えが組み込まれ、のちの重要なシーンに繋がる。読み進める事に、「あ、このシーンもしかしてあの時あの人が言ってたことと繋がってるのでは?じゃあこのセリフは…」と読み手が頭をフルで使うような漫画です。漫画の楽しみ方は人それぞれですので、これは私と私の周りの友人がしている楽しみ方を記載させていただきます。楽しみ方の一例として読んでいただけたら幸いです。
映画の東京喰種はその考察するワンクッション、その時に起こったシーンの余韻を味わう間なくパッパッパッと次へ進みます。尺が足りないのはわかるけど、これはひどい…。なので「ああ、このシーンはどういうこういうアレで…」って思う前に「ああ、このシーnえ?もう次?」となります。喰種特有のその背景やシーンを考える余韻がないまま次へ進むのです。これは漫画と映画の壁で、どうしようもないところがありますが、あまりにもレイコンマで場面が変わるのです。せめて秒で時間を置いてくれないと、噛み締められるものも噛み締められません。
喰種ファンとしては、間の置き方が本当に勿体ないの一言です。あと尺の問題でしょう。変えなくてもいいようなシーンを変えていたので、ここのシーンがないと今後のアレに繋がらないのに、そういうのが多々見られたので、それは映画を観て確認していただければと思います。
ここまで散々批評でしたが、全体通してのこの映画のできはとても素晴らしいと思います。東京喰種の世界観、理不尽さ、そういったものがよく表現されていますし、原作に忠実な食べ物の不味そうな表現、いい意味での赫子の気持ち悪さ。そして映像技術とillionの主題歌。初めは凛として時雨じゃないことに子供のように不貞腐れていましたが、素晴らしい音楽でした。そして役者さんの演技、本当に素晴らしかった。素晴らしいの一言です。それ以外なにも言葉は出てきません。
ですが、原作を読み込みすぎた結果、「えっ違うじゃん…」というシーンが目立ちすぎ、もう少し上手くできなかったのかと考えてしまいます。
寄生獣のように構成が別れていれば、少しは違ったのかもしれない、そう思わずにはいられない映画でした。
しつこい様ですが、全体通してのこの映画は素晴らしいです。是非劇場に足を運んで頂きたいです。これはあくまで色々な考えがあるんだな、と観る映画を選ぶ際に軽く考えていただければと思います。
※コメントご指摘ありがとうございました。訂正させていただきました…正しくはollionではなくillionでした。
原作を知る人の違和感。分かりますよ。ご自身でも言っているように、映画の価値を褒めながら、違和感をぶつけてますねー。
まあ、原作を映像にしたらこうなるというパラレルワールドのようなものだし、逆に私なんかは、日本的な誇張やタメ、バトルに語りや対話ではなく身体で語れよと言う方なので、割とスッキリして観られましたよ。
感じたことをとても上手に表現されていると思いました。自分ではうまく言葉にできないので本当にすごいなと思いました。ただollionでなくillionです、細かくてすみません。