「"親愛なる、よそ者"どうしの不器用な家族関係に唸る」幼な子われらに生まれ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
"親愛なる、よそ者"どうしの不器用な家族関係に唸る
まさに"第41回モントリオール世界映画祭"のコンペティション部門で、"審査員特別賞"を受賞したというニュースが入った。百聞は一見に如かず。この受賞の一報は十分に納得のいくものである。
直木賞作家・重松清原作といえば「恋妻家宮本」(2017)や「アゲイン 28年目の甲子園」(2015)など、ここ3年で4作品と続いている。それも監督や制作会社はすべて別で、その人気の高さがわかる。
重松作品は、いずれも現代社会における家族や人のつながりをテーマにした、"人間ドラマ"である点で共通しており、人物設定が物語の核になっているので、俳優の力量がそのまま出やすいとも言える。それを三島有紀子監督が撮るというので、それだけで楽しみになる。
本作も、夫婦役を務めた浅野忠信と田中麗奈の演技力、3人の子役キャスティングの南沙良(薫)、鎌田らい樹(沙織)、新井美羽(恵理子)の自然なカラミを存分に楽しめる。
バツイチ同士の再婚である夫婦には、妻の連れ子である2人の娘がいる。その4人家族のもとに新しい"命"が宿った。つまり夫婦初の実子である。一方で、夫には元妻のもとに娘(実子)がおり、離婚後も年に数回の対面を繰り返しているが、同居している2人の娘以上に親密な親子関係が継続している。
複雑な気持ちになった長女は、"本当のパパに会いたい"とグレ始めてしまう。さらに元妻の再婚相手が、余命わずかのガンに侵されていることがわかる。
"本当の親になれないオトナ"、"本当の子供になれないムスメ"、"形だけの親でありながら愛情を注ぐオトナ"・・・・不器用な家族関係が延々と描かれるが、飽きさせないテンションで最後まで、人間関係のシビアな課題を突きつけられる作品だ。
ちなみにモントリオールでは、外国語タイトルが「DEAR ETRANGER」(親愛なる、よそ者)と付けられたが、こちらのほうが実にタイトルらしい。しかも、"英語"+"フランス語"という実に日本的な外来語が、カナダ(モントリオール)という地においては、見事にハマったのではないかと思ったりして…(笑)。
(2017/9/5 /テアトル新宿/シネスコ)