「好き嫌いがかなり分かれる作品」忍びの国 フランソワーズさんの映画レビュー(感想・評価)
好き嫌いがかなり分かれる作品
好き嫌いがここまで ハッキリと分かれる作品も珍しいと思う。
まず王道の時代劇やアクションを想像している人にとっては なんだこりゃ!な演出の連続が続く。
戦国物のグロさを期待している人にも物足りないのだろう。
監督はこの作品で安易に血が流れるような演出をあえて取らなかった。
全ての人に見てもらえる作品を作るという時代劇のアクション物として非常に難しい事案にトライした意欲作でもある。
時代劇を侮辱していると 捉える人もいるかもしれない。
でも 時代劇はこうでなくてはいけないといった固定観念が 今の時代劇の衰退を招いている原因でもあると思う。
今回の忍びの国を評価している人達は、言ってしまえば 王道の時代劇に馴染みが無いのだろう。
そのため 拒絶反応も少なく
この作品は ふざけた なんでもありのエンターテインメントととして素直に受け入れられているのだと思う。
前提として 先になんでもありのエンターテインメント作品だという認識があり
その上で 見進めると
例えば序盤の軽い内容の薄いチャンバラだと 一部の人の否定材料にもなっている 小競り合いが
それさえも伏線であるとわかる。
その繰り返しが最後まで続くのだ。
なんでもありのエンターテインメントなのに
深い心理戦があり
なんでもありのエンターテインメントなのに
成長や愛、自分自身を否定する深いメッセージ性にも気づく
何度も見たくなるのは 見るたびに見方が変わるからだ。
過剰な演出も だからこそ そこが印象に残ったという人もいれば、しらけたという人もいる。
受け止め方は人それぞれだけど
終わったあとに印象として必ず残っている。
だからこそ この映画を普通じゃないものに変えている。
監督の戦略は的中している。
ストーリーでいうと、
ギャグの部分を伊賀側が受け持ち
敵であるはずの織田軍がまっとうな時代劇に引き戻す。
本来なら義である伊勢谷友介や、鈴木亮平を主人公にはせず
クズである代表格である無門を主役に置く。
場面場面で応援したくなる側が 変わっていくのだ。
面白いくらいに。
受け入れ方によって ここまで 面白さが変わるという事を 今回とても実感している。
そしてその魅了させたストーリーがどうでもいいくらいにアクションが凄い。
ただの戦闘をトリッキーに見せる。
血やグロさで引っ張らない戦争で あそこまでワクワクしたのは はじめてだ。
邦画のアクション物は どうしても ハリウッド作品と比べると 劣る。
予算もまったく違うので仕方ないけど。
その しょぼさを 逆に日本人の独自の細さで まったく新しいアクション物として変えてしまっている。
二人の決闘のシーンは圧巻だし
その上で同時に 心の動きに涙する。
アクションの迫力と 心の動きが同時に襲ってくるのだ。
好き嫌いは わかれると思うが 私には
ショックを受けるくらい 斬新な作品だった。