エリザのためにのレビュー・感想・評価
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おっさんの自己満足
娘のためにといいながら、自己満足でしかない行動に終始する男だが、
妻に愛想をつかされ、娘も自立するべく父の干渉を拒否し、私としては
後味さわやかに思いました。てめーの思いどうりになんかなるかいよという気持ちです。
ルーマニアの文化・国の成り立ち、現状を全く知りません。
鑑賞後にルーマニアがどの位置にあるのか世界地図で確認して、
なるほどここにあるねんなと思う体たらくです。
単語の1つもわからない言葉ながら、興味深く見ました。
エリザの彼氏がかっこよかったです。
おばあちゃんが瓶づめをたくさん息子に持たせる感じが、
せつないなーとか思いました。
あの腹の出っ張った50男の何処がよくて、不倫してたんでしょうね、彼女は。
ルーマニアは本当に、映画で描かれていたような、コネとワイロが
世渡りの秘訣って感じの社会なのでしょうかね。
主人公夫婦は冷戦終結の頃に帰国したっぽいことをゆっていました。
祖国がよい方向に変わると信じて帰国したけど、そうはならなかったことに
夫は失望し、できのよい娘にはケンブリッジへいって自分の果たせなかった
幸せを謳歌して欲しいと願っている。
迷惑な願いではないと思いますが、本人が望んでいないことを
押し付けていたならば、それは親のエゴですから。
親子の世界の鬱陶しさ、身勝手な男のあるあるに万国共通のテーマを、
ルーマニアの生活・しきたり等に知らない世界をのぞく好奇心を
感じました。
が、ちょっと中だるみで飽きたってのと、
主人公が暗がりをあるくシーンが怖すぎて、はらはらしたので☆3です。
確信犯=それが正しいことと信じて犯す罪
親が子に対して言う「あなたのため」の落とし穴。親から子への愛が、親のエゴの押しつけに変わり、その独善的な正義に気づかない「誠実」さ。
人は主人公のことを「誠実な人」と語る。しかしその誠実な人が、小さなきっかけ(それさえも自分自身では正義感ゆえ)で倫理を外れていく。根回し、収賄。それらすべてが「エリザのため」というエクスキューズで許されると男は信じ込んでしまう。誠実な人の正義が大いに揺らぐ様を、物語はしっかりと凝視する。その人間観察の鋭さに感服。
カメラワークはひたすらに主人公の背後に立ち、彼の背中を追いかけ続ける。全てのシーンが主人公の一人称で切り取られていく。それはまるで、彼の視点で物語を見るようにも見えるが、しかし観客は客観的な目でそのカメラを見つめる。主人公の主観を、観客は客観的に見据えるようなカメラの位置。主人公は自らの主観でものを見る。だからこそ時に冷静さを欠き、判断を誤り、大事なものを見落としてしまう。そしてその様子を観客は客観的に見据えるため、それらに気づいていく。気づかないのは主人公だけ。この主体と客体、主観と客観を巧みに操ったようなカメラワークは容易く真似できる技ではない。
それでいて、物語は主人公を安易に糾弾したりなどしない。誰でもが陥りかねない小さな罪の背徳の積み重ねを冷静沈着に理路整然と描き出す。人間が、自分は正しいと思い込んだまま静かに着実に道を外していく様子に、思わず自らを戒めたくなる。ルールを守らない子に石を投げた少年と、石を投げてはならない理由を説明しない男。こういう巧みな構図が、映画の随所に散らばっていて、ひとつひとつが効いてくる。
こういう映画は、やっぱりヨーロッパが強い。勧善懲悪が得意なハリウッドなら最終的に主人公に罰を与えるだろう。しかしそれをしないところに、ムンジル監督の人間のありのままを濁りない目でしっかりと見つめる感性の鋭さを感じる。
すばらしかった
なぜ主人公が医者なのか。なぜ彼の友人が警官なのか。そういった「セリフで語られない面」に目を向けると、彼らの苦悩と戦いの歴史が垣間見え、やるせなくなる。そういった「語られない面」の置き方が、この脚本は実にすばらしかったと思う。彼が林の中、ひとり泣いてしまったその時に、わたしはふかく彼に心を捕らえられてしまった。あのとき、彼はどんなに悔しかったことだろう。
「ダメなことはダメなんだ」「どうして?」「お母さんが教えてくれる」ここで自分が思う正しさを少年に語らないところに、主人公のどうしようもなく実直な面が現れていると思う。やったことの是非はともかくとして、彼の根本は優しく、賢く、そして真摯なのである。
最後「わたし、上手くやったでしょ」と娘が笑ったそのときに、ああ、主人公が彼女に教えてきたことは、きちんと彼女の中に根付いているんだなあと、しみじみ感慨深くなった。彼女は自分で正しさを選び、そのうえ「上手くやること」すらも、自分で物にしたのである。そしてそれはまさに、主人公が戦い、負け、屈辱にまみれた痛みと共に、彼女に伝えてきたことなのだ。
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