劇場公開日 2017年1月28日

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「父親として出来ることの全て」エリザのために フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

父親として出来ることの全て

2017年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

娘の大学入学のために奔走する父親の話

音楽も少なく、主人公に寄ったカメラワークで臨場感あふれる作品だった。
娘のためにあらゆるコネを使って大学に入れようと頑張る父親、何とも健気な父ではないか。と鑑賞前は思っていたのだが、父親である主人公は不倫していて全然いい父じゃない。
夫婦間は冷め切り家庭もあまりいい環境ではない、娘の将来のためと言っているが自分の事ばかりで娘の意見を尊重しない。
見ていて全く応援できないする気になれない。
娘の事件に対する怒り、チャンスを棒に振りたくない気持ちはわかる。
だが、父として正しい行いをしているにしても、不正や不倫をしている姿は決して尊敬できる男ではないのだ。

この映画の面白い所は、尊敬は出来ないがもし自分が同じ立場なら同じ事をしただろうと共感てしまうことだ。

このアンバランス感、正義と悪の狭間がまさに現実社会だなと思った。人間はわがままで自分勝手なのだと思った。

娘もいい子なのだが、物語が進むにつれてあまり信用できなくなってくる。
「もう大人だろ」と言いながもら知らず知らずのうちに束縛してしまい、選択の自由を奪っているので、本当は大学に行きたくなくて狂言なのではないかと疑ってしまう。
疑惑があっても娘を信じて奔走する主人公。真実がどこいあるのかもわからないし、不正は行われるしで映画全体の不安定感がなんとも言えないトーンで進む。
この不安定で気の休まらない感覚は新鮮だった。

終盤、容疑者を追いかける場面もよかった。闘志満々で尾行したものの、自分が全くの丸腰でなんの強みも無い事に気づき、夜の街でどこから誰が出てくるかわからない心もとなさ、犬の鳴き声や足音だけで不安と恐怖がここまで表せるのかと驚かされた。

主人公には最期、然るべき報いがまっている、当然の結果なだけに同情はできない。ただ共感はできる展開なのですっきりはしないもののいい映画だなとは思った。
面白いかと聞かれれば返答に困るが、高い評価は納得の作品だと思う。監督の技量も俳優の実力もしっかりしているので完成度はとても高いと感じた。

劇中セリフより

「自分で決めたならそれでいい」

親として守る事、導くことは当たり前だが、自由な意思を与えるのも親の義務

束縛し過ぎないようにでも悪い道に行かぬ様にするのはとっても難しい事なのだなと感じた。
もしも親になった時は、子に自分の理想を押し付けて過ぎて窒息させないようにしようと思った。

フリント