劇場公開日 2017年12月1日

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「デタラメ人間の名場面ダイジェストコスプレショーに巻き込まれた」鋼の錬金術師 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)

1.0デタラメ人間の名場面ダイジェストコスプレショーに巻き込まれた

2021年11月20日
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鑑賞方法:DVD/BD

原作漫画は全巻持ってます。「好きな漫画は?」と聞かれれば「ハガレン」と即答するくらいには大好きな漫画です。

でもこの映画はダメです。ド三流です。久々に褒められるところが見当たらない清々しい糞映画を見つけることができて逆に感動してます。

この映画を表現するとしたら「名場面ダイジェストコスプレショー」ですね。物語的な面白さは皆無と言っていいんじゃないかと思います。無駄に豪華な役者陣がコスプレしているのを観て楽しむタイプの映画だと思います。

原作のヒューズ中佐の台詞に「俺みたいな一般人をおまえらデタラメ人間の万国びっくりショーに巻き込むんじゃねぇ!!!!」という台詞がありますが、この映画を鑑賞した私の気持ちもそんな感じです。鋼の錬金術師の映画を観ようと思ったら、無駄に金を掛けた鋼の錬金術師名場面再現コスプレショーを2時間見せられました。

とにかく原作の人気のある名シーンだけを切り貼りしたパッチワークみたいな映画で、その名シーンに至るまでのストーリーやいきさつをカットしてしまっているが故に物語的には何の面白さも感じられない。伏線を張ってないのに伏線回収のシーン見せられている気分になります。登場人物の描写が不足していてストーリーが駆け足で進むのに、長々と愁嘆場とか登場人物の葛藤とか見せられても感情は「無」です。主人公が涙を流したり慟哭するシーンで、全く感情が動かない映画は初めて観ました。

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様々な物体を生み出すことができる「錬金術」が存在する世界。兄・エドワード(山田涼介)と弟・アルフォンス(水石亜飛夢(声))の仲の良い兄弟は、幼い頃に亡き母親を蘇らせるために行った人体錬成の代償で体の一部を失ってしまう。兄弟は失った体を取り戻すために錬金術の効果を増幅させる「賢者の石」を求めて、世界中を巡る旅に出る。
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凄い気になったのは「原作を知らない人は理解できるんだろうか」ってことですね。

雑に切り貼りされた脚本。原作にあった人気の高いシーンだけを雑に繋げたような内容で、起承転結も何もないから意味不明なシーンとか唐突なシーンが多いんですよね。例えばキャラクターの説明もほとんどないからマスタング大佐が突然火炎放射し始めるところ。何の説明も無くいきなり火炎放射し始めるし、原作の描写と全然違うのが凄い気になりました。

他にもヒューズ殺害の容疑者の周辺人物ということで捕らえられていたのに見張りを殴って逃走したのでお尋ね者になっているはずのホークアイが、賢者の石によって動く人型生物の排除のために兵士を率いているところとかも違和感ありましたね。他の兵士からしてみればホークアイは「脱走兵」なので、ホークアイの言うこと素直に聞いているのはおかしいんですよ。

上記のような違和感や説明不足があまりにも多いので原作読んでない人に理解できなさそうな描写も多いし、原作設定ガン無視で原作ファンが怒りそうな描写も多い。誰に向けて作られた映画なんでしょうか。

あと、こういう漫画実写化糞映画にありがちなんですけど「続編を匂わせる終わり方」をするんですよね。福士蒼汰主演の『BLEACH』も山崎賢人主演の『ジョジョの奇妙な冒険ダイヤモンドは砕けない』も、続編を作る気満々の中途半端な終わり方をしていて、結局興行収入が振るわなくて続編の企画が頓挫しました。「捕らぬ狸」ならぬ「撮らぬ続編」ですね。本作もエンディングがマスタングの攻撃によって死んだと思われていたエンヴィーの本体が出てくるという「続編あるよ~」という展開になっており、この映画だけで完成された作品になっていない実に中途半端な映画になっています。私は映画の評価する時に「一本の映画で物語が綺麗に完結しているか」という基準を設けているのですが、この映画はその基準は満たせていませんでした。

最後に、こういう漫画原作(特に海外を舞台にしていたり時代設定が現代ではない作品)って、どうしてもコスプレ感が強くなりがちなんですよね。本作でも映画開始直後、幼少期のエルリック兄弟の描写がありますが、あのわざとらしい金髪はなんとかならなかったんですかね。それ以外にも、山田涼介演じるエドワードの金髪とか、ホークアイ中尉の金髪とか、エンヴィーの衣装とか。

『鋼の錬金術師』と同じように舞台設定が外国で時代設定が中世のダークSFの実写化として先日レビューした『黒執事』が思い浮かびますが、『黒執事』の方は舞台と時代設定を現代の日本に変更し、キャストに日本人離れした顔立ちの水嶋ヒロを起用するなどの工夫で、(それが成功していたかどうかは別として)「コスプレ感」を排除する努力をしているのが見て取れました。

しかし本作はそのような努力の痕跡は一切見受けられず、漫画と実写の違いなど全く考慮していません。「原作に忠実」と言えば聞こえは良いですが、実際のところ完成度の高い原作を実写作品に落とし込む努力を放棄しているように感じられます。

「漫画実写化映画の失敗例」として名前を挙げられることも多い『進撃の巨人』は、当初舞台を日本に変更する案があったものの大人の事情で原作に忠実な世界観での実写化となったそうです。なので、本作ももしかしたら当初の想定から外れてこのような作品になってしまったのかもしれませんが、そういう裏事情は観客にとっては心底どうでもいいことです。

ごめんなさい、長々と批判してしまいました。本当に褒めるところが見当たらないんです。
数少ない褒めポイントは、松雪泰子さん演じるラストと内山信二さん演じるグラトニーの再現度の高さと、水石さん演じる声。特に水石さんは当初はアルフォンスをCGで表現するためのモーションアクターでの起用であったのに、声と山田涼介との掛け合いの上手さを認められて急遽声優としても起用されることになったというエピソードがあるほど、「アルフォンス」というキャラクターにピッタリだったように感じます。

以上です。

といぼ:レビューが長い人