劇場公開日 2017年12月1日

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「禁断のハガレン実写の錬金術は、魅力ナシ空っぽの代償と引き換えに」鋼の錬金術師 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0禁断のハガレン実写の錬金術は、魅力ナシ空っぽの代償と引き換えに

2018年4月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

単純

寝られる

昨年公開されたコミック実写の中でも、製作発表時から良くも悪くも大変な話題を呼んだ本作。
原作は荒川弘の同名コミック。
超人気作故、厳しい声がずらり。
原作もアニメも見た事無い。でも、興味惹かれ何度かアニメを見てみようと思った事はある。
話的にも題材的にも面白そうで、和製冒険ファンタジーとして、少なからず楽しめそうと思っていたのだが…、う~ん…。

まず先に悪くなかった点を。
イタリア・ロケや美術や衣装など。和製ファンタジーの雰囲気をなかなか出していた。
見せ場となる錬金術やアクションのVFXより、フルCGのアル。これは見事であった。
キャストでは、松雪泰子が妖しい魅力を放っていた。
キャラのビジュアルは、悪く言えば単なるコスプレ大会、良く言えば頑張って寄せていたとは思う。
…以上くらいかな。
後は残念・ガッカリ・微妙な点を。

幼い頃に亡き母を生き還らせようとして禁断の人体錬成を行い、代償として右腕と左脚を失った兄のエドと身体全てを失った弟のアル。失われた身体を取り戻す為“賢者の石”を探す旅を続けている…。
…という話の始まり方はおそらく原作に沿っている筈で、いい。ハガレン初心者でも入り易い。
でも、それからが…。
キャラ描写も話の展開も薄く浅く、面白さを感じなかった。
途中まで人気だけの俳優がコスプレして、のほほ~んとやってるだけ。
やっと中盤から話に拍車がかかってもすでに遅く、すっかりもう退屈してしまっていた。結局それは最後までズルズルと…。

原作未読の者でも、長大なストーリーを2時間ちょっとに収める無理さは明白。
いやそれ以上に、どのエピソードも淡白と言うか、引き込まれる魅力を感じられなかった。
本来は非常に面白いのだろう。それは分かる。
エドとアルの兄弟愛はもっと巧く出来た筈だ。
大泉洋演じるタッカーの狂気。キメラの正体などゾッとしたが、もっと悲劇性を打ち出す事だって出来た筈だ。
錬金術の不思議な力やその恐ろしさ、命や代価など、もっと深みを持たす事も出来た筈だ。
それらを活かせなかった。
陰謀などのストーリー展開は予定調和、ラストなんて急にゾンビ・ホラーみたいに。見せ場やアクションも物足りない。
聞けば、入りは原作に沿っているが、後はオリジナル・ストーリー。この水と油感はそのせいか。

自らのVFX技術を過信して、禁断のハガレン実写化という“錬金術”を行ってしまった曽利監督。
演出も中身も魅力も空っぽという代償と引き換えに。

近大