「根は真面目」ナイスガイズ! everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
根は真面目
舞台は1977年のLos Angeles。
別々に依頼を受けた、ちょいと落ちぶれ気味の男2人が、何者かに狙われている少女を探す内に、大きな陰謀を暴くことになるお話。
排気ガスが大気を汚染するように、社会に蔓延する嘘とprofanitiesが子供を毒していく現状を皮肉っています。
企業は業績を上げるためなら平気で誤魔化す。
宣伝効果を高めるためならキワドイ画像も遠慮なし。
モーターショーではなぜか車の脇に美女が立ちますね。当時はまだロングドレスだったようですが、近年は…。
よく“Sex sells.” と言いますけど、そんなもの見ちゃダメ!と叱った所で、「そんなもの」は巷に溢れており、子供でも容易く手に入るのです。いくら注意しても子供の好奇心を抑え込むことなど不可能です。現に大人の興味関心は情けないほど狭くて、「そういうの」でもない限り、社会問題にも向けられないし、売り上げも伸びないのです。
最近の子供はどうかしてる…って嘆いても、大人がどうかしてるから、なんですね。罵詈雑言もポルノもマリファナも、不健全な知識は大人から吸収し、背伸びして大人を真似ているのですから、「どうかしている」子供の姿は大人そのものかも知れません。
なぜAmelia達がポルノ女優を使ってまで映画を撮ったのか。そうでもしなければ大気汚染問題に関心を持ってもらえないと考えたからです。「そういうの」がダメだと言う前に、「そういうの」がなくても彼らの言い分に耳を傾ける大人がどれだけいるのかと。
従って本作で、冒頭からおいおい…という描写も、やたらヌードが出てくるのも、作風というより意図されているのだと分かります。
大人の本音を隠す建前に衝突し、抵抗する子もいれば、真似して同じような大人へと成長していく子もいる。
子供らしさを守ろうとする大人もいれば、進んで大人の世界に引き込もうとする大人もいる。
恐らくあえてバカっぽく?キレやすい感じのAmeliaですが、大人達の不正と矛盾に若いながら精一杯抵抗した子です。やり方がマズイ、それでは社会を変えられない、ということに気付かない反抗期世代(10代)だということを、彼女のキャラに含めているのかなと思いました。
また、母親が彼女を守れなかったことは、
「大人の嘘と建前で子供を守ることはできない」ということを意味しているようでした。子供を危険に晒してでも守るべき産業なんてありませんよね。子供を守れなかったら、国の未来もないのですから。
オマセな13才Hollyは、一通りオトナ事情を理解しているように見えますが、相手がワルでも殺しちゃダメと言って助けを呼ぼうとする所に、まだ汚れていない、純真な子供の心が残っていることを示しているようでした。
Hollyの友達Jessicaは、丁度分岐点にいる感じでしょうか。
子供が「約束だよ!」と小指を出したら絶対に守らなければいけない約束だし、「もう口きいてあげない!」という宣告は子供が施行できる最も重い罰なのだし、裏切って落胆させれば夢も希望も持てない冷めた人間になっていくことを、MarchとHealyは理解している大人でした。
自由に大空を飛ぶ鳥を大気汚染から守るため自動車を見直さなければならないように、子供の純白な心を品性のない大人社会から守るためには、大人が襟を正す必要があるということを訴えていました。
まぁ個人的には、子供社会には子供なりに、加減を知らないが故の残酷さがあると思いますがね。
また最近は、報道より映画の方が、よほど真実を世に広める役割を果たしていると言えるくらいで、Marchが狙われたfilmを無事確保する所に、映画を死守する必要性と覚悟を感じました。
Ryan Gosling、こんな顔もできるのねっていうくらい、色んな表情が見れました(^^)。
殴り合いは、やはりRussell Croweが担当。
クライマックスの流れるようなアクションは、超ふざけた ”L.A. Confidential” というか、テンポが良かったです。Healyの熊のごとし体当たり!何回転んで落ちるんだMarch!!
最初から悪ノリですし、後々鍵となる重要人物がさらっと出て来るので、始めから注視していないと何が何だか分からなくなってしまいそうな話ではあります。もう少し冗談少なめの方が本筋がスッキリしたかも知れませんね。
軽い悪ふざけのようで、テーマは意外と真面目な作品でした。
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あぁそう言えば、死に際にNixonは…嫌かも(^^;)。
“Marriage is buying a house for someone you hate.”