「【”デカダン。”女性同士のエロティシズム溢れるシーンに眩暈を覚える作品。今作は野望や変態性溢れる男達の中、恋心を貫き通し新たなる世界へ踏み出した二人の女性の姿を描き出した作品でもある】」お嬢さん NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”デカダン。”女性同士のエロティシズム溢れるシーンに眩暈を覚える作品。今作は野望や変態性溢れる男達の中、恋心を貫き通し新たなる世界へ踏み出した二人の女性の姿を描き出した作品でもある】
ー 今作で、秀子お嬢様を演じたキム・ミニさんと、スッキ(珠子)を演じたキム・テリさん(もちろん、とてもお美しい・・。故に鑑賞中クラクラしてしまった・・。)の正に体当たり演技(だって、一歩間違えれば、女優人生が限られてしまう程の、倒錯した世界の中で必死に生きる姿を演じているのだから・・。)には敬意を表する。
更に、後年良い人役が続く、藤原伯爵と言う名を語った詐欺師を演じたハ・ジョンウの確かなる演技がこの凄き作品を支えているのは、間違いない。-
■1939年の朝鮮半島。
支配的な叔父、上月(チョ・ジヌン)と、彼の膨大な蔵書に囲まれた豪邸から一歩も出ずに暮らす令嬢・秀子(キム・ミニ)の下へ、新しいメイドの珠子こと孤児の少女・スッキ(キム・テリ)がやって来る。
実はスッキは秀子の財産を狙う藤原伯爵の手先だったが、美しく孤独な秀子に引かれてしまい、秀子も又彼女に惹かれて行き、禁断のエロティシズム溢れる関係になっていく。
◆感想
・物語構成は、今作の原作となったサラ・ウォーターズの「茨の城」に、ほぼ忠実である。(私見である。)
だが、今作の魅力は、美術陣が製作した”日本統治下の朝鮮”の上月家の豪邸及び、上月が所有する莫大な春本、春画(葛飾北斎や、北川歌麿が多かった気がする。)などの小物に拘った点である。
・更に言えば、韓国俳優の方々の多少片言になる所は有るが、流暢に話す日本語であろう。
ー ここは、パク・チャヌク監督の拘りであると思うし、敢えて片言にする意味も伺える。例えばドイツを舞台にした「ワルキューレ」で、ドイツ軍曹であるトム・クルーズが英語で喋っていたり(勿論、面白い映画なのであるが、気になってしまったのである。)、ハリウッド日本映画あるあるの類型的な日本人の描き方をしていない点である。
(勿論、韓国人と日本人の民族的には似ている点があるとはいえ・・。)ー
・そして、お互いに秘密を抱える秀子とスッキとの間に芽生えたレズビアン的な恋心。
ー それとは対照的な、”上月”と言う名を日本の上流階級の女と結婚して手に入れた朝鮮人の男(チョ・ジヌン)の屈折した思いから芽生えたと思われる異常なるSM嗜好をキッチリと描いている点も凄い。
大勢の日本人と思われる男達の前で、正座して春本を読まされる幼き秀子の姿。
男としては、女性に対して申し訳ない気持ちが込み上げるシーンであり、同性である変態的な”上月”に対して、複雑な思いを抱いたシーンである。
あのシーンは、女性に対する辱め以外の何物でもない。
今作の中で唯一違和感を感じたシーンであるが、申し訳ないがあのシーンがあるからこそ、この映画に深みが加わっているのも事実である。-
<ラストは爽快である。
秀子とスッキは旅券を偽造し、新たなる世界へ旅立つ。
一方、“獲物”に逃げられた”上月”は、藤原伯爵を拘束し、一本一本指を切り落としながら、秀子との初夜の話を聞き出す。
だが、”上月”が期待した話は藤原伯爵からは得られず、初夜の床に在った血は、秀子が自ら処女から女になった事を知る。
今作は野望や変態性溢れる男達の中、恋心を貫き通し閉鎖的な世界から、新たなる世界へ踏み出した二人の女性の姿を描き出した作品である。>