「コンクリートに染み渡る、おかしみと孤独と温かさ。」アスファルト ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
コンクリートに染み渡る、おかしみと孤独と温かさ。
フランスのとある町に佇む公団住宅。ムダな要素をほとんど排除したこのミニマルな空間は、空っぽすぎてある意味、時代を超越したSF世界のようだ。住民たちも互いに没交渉で、とてもじゃないが強い絆で繋がっているように見えない・・・。なんだか今まさに世界中で起こりつつある社会の分断を投影しているような舞台設定、そして6人の(群像劇の)主人公たち。一方、エレベーターだけはマイペースに上下運動を繰り返し、人や物を運んだり、運ばなかったりするという、これまた巧みな物語上の仕掛けが観る者の心を惹きつけてやまない。アスファルトと言うより「コンクリート」。どこかひんやりとした触感が伝わりつつも、決して悲観的にならず、仄かなおかしみを込めて「誰かと繋がりたい」という思いを一筋の陽光のように差し込ませる。世の中に足し算の演出がはびこる中、引き算を使って全体を制御し、観客に様々な思いを想起させるこのベンシェトリ監督の才能に感銘を受けた。今後が楽しみな逸材だ。
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