「アッサリだけど人間賛歌」アスファルト kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
アッサリだけど人間賛歌
粋でコクのある小品、といった趣きの映画でした。
脱力ギャグの中で、人と人との心の交流をものすごくサラっと描いていて、なんとも心地よいです。
登場人物たちは基本的にみな孤独です。そんな人たちが互いに出会っていき、相手を思いやる態度を取ったり取られたりしていくうちに少しずつ頑なな守りが解けていく。そこで生じるのはあくまでも些細な変化。そして、関係は長続きするとは限らないけど、ここで描かれた瞬間こそが彼らにとってかけがえのない体験になっているんだろうな、と思わせてくれました。
特に印象に残ったのは、中年女優が少年に促されて、オーディション用のビデオを撮るシーンです。過去に生きていた彼女が、少年の指導(?)を受けて、徐々に過去の仮面を脱いでいき、素直な表情になっていく姿に心打たれました。この少年との交流が彼女を今を生きる女性に変えたのだと思います。
この作品もそうですが、少ないセリフで観客に解釈を委ねる造りはフランス映画の共通の特性なのでしょうか?これが結構面白いです。観客に主体的な想像力を求めるので、楽しみつつ集中して観るため、充実した気持ちになりました。
あと、イザベル・ユペールがとても美しかった。
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