モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由のレビュー・感想・評価
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10年に及ぶ愛の変遷を卓越した筆致で描写
白銀のゲレンデは真っ白なキャンバスのようだ。ここを皮切りとして、様々な感情と色彩、そして音色が絵の具のようにぶつかり合う。ひと組の男女の10年間を苦難と激情をちりばめながら描き出す手腕は、どの瞬間においても濃密で芸術性に富み、メイワン監督らしい女性の生き様が凝縮されている。
自由奔放な夫をヴァンサン・カッセル。彼の身勝手さに翻弄されながらも、愛することをやめない妻をエマニュエル・ベルコ。内面から外面まで全てをさらけ出して抱き合い、愛し合い、愛しているが故に激しくぶつかり合う彼らの姿には、単なるラブストーリーを超えた人間の性(さが)のようなものすら見て取れる。医師は語る。「膝は、後ろにしか曲がらない」。その一言が激流の中における一筋の冷静な視点となって心を貫く。きっと私たちは後ろに築いてきたものに支えられながら未来を切り開くしか術がないのだろう。優しい視点が交錯するラストシーンにほのかな希望を見た思いがした。
いい大人があまりに未成熟な男女関係
男と女のことに、大人も子供も理性も知性も有り得ないのはわかっているし、こういうことを言うのは野暮だろうとは思うのだけれど、どうしても「いい年して未成熟な男女関係だなぁ」と感じてしまう。
本能的なまでに愛し合い憎しみ合い求め合う「愛」と言えば聞こえは良いけれども、登場人物にはまるで共感できないし、二人の関係を理解できる気にもならず、少しも惹かれない「愛とやら」の有様をただただ見せつけられる苦痛と不快感。
裏も表もサイテー男でしかない男と、愛して許す姿がただの馬鹿に見えてしまう女。いや、確かに、男女関係なんて客観的に見れば滑稽な戯れでしかなく、ただその渦中に在る当事者になると、途端に冷静な目を失って正しい(でも何を以て正しいとするんだろう?)判断がつかなくなるのはごくごく自然なことで、そういう様子を見ることは出来るとは思うのだけれど、それってでもせいぜい20代の男女でなら「盲目な恋」も様になるが、さすがに大の大人がもうちょっと思慮深くはなれないものか?と此方の目だけがひたすら冷静になっていく。こんなはた迷惑な夫婦・・・わざわざ映画にしなくていいから、何処か他所で勝手にやっててくれ、と思ってしまった。
不完全な男女が不完全な愛をぶつけ合う様って、映画としてはとても崇高で素晴らしいテーマだと思うけれど、この映画の男女に関しては、もうただただ「別れりゃいいじゃん」と思うだけだった。憎しみ合う気持ちは理解できても、求め合う気持ちはまったく理解できずに終わってしまった。交互に挿入されるリハビリのシーンの効果もイマイチ伝わらず。
私には、思い込みの強い独善的な映画としか思えなかった。
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