「子供たちよ、観よ! これが大人の本気だ!!」シネマ歌舞伎 スーパー歌舞伎II ワンピース 加藤プリンさんの映画レビュー(感想・評価)
子供たちよ、観よ! これが大人の本気だ!!
圧巻のお祭り騒ぎ。
大人が本気になったとき、奇跡が起きるんだって事を
子供たちに見せてやりたい。
漫画、アニメ。 演劇、歌舞伎。
そのどちらかしか観たことのない人には、この作品は難しい。
心の中の期待値が高すぎて、それを超えることはないだろう。
しかしその両方を知っている人からすれば、これはもう素晴らしい! なのだ。
スーパー歌舞伎、古典しか知らなかった人には、漫画やアニメを。
また原作やアニメしか知らない人には、演劇、日本の古典芸能を。
それぞれがそれぞれを知り、先入観を捨て、興味を持って、その垣根を乗り越えて欲しい。
そうすれば、この作品の本当の価値が理解できると思う。
目に見えるところに、それはない。
目に見えないところに、それはあるのだ。
たとえば
人間は空を飛べない。それはもう、どうしようもない現実で、
その人間を、空に飛ばすだけで、どれだけの手間が必要か。
吊りワイヤが見えたら興醒め、なんて人には、想像力というモノがないのか、と問いたい。
このワイヤの先に、果たして何人のスタッフがぶら下がっているのか。
このアクションのために、何日、稽古を重ねているのか。
この演技演出のために、どれだけの歌舞伎という伝統技術が応用されているのか。
これだけの数の出演者が、どれだけ準備をしているのか。
衣装を用意するだけでとてつもない予算と手間と時間だろう。
漫画を舞台化するということの、その熱量。
2次元を、2.5次元ではない。3次元化することの重さ。
それだけの目に見えない贅沢な力が、観客に届くから、感動が生まれるのだ。
原作と歌舞伎の、それぞれの魅力を発見して欲しい。観て解らない人は、勉強して欲しい。
そのための、夢の架け橋になるような、そんな作品だったのだ。
---------------------- ここからが、映画としての感想 ----------------------
そしてその架け橋は、映画界にも手を伸ばしている。
シネマ歌舞伎とは、そういう企画だったはずだが、
社会的に話題に上ることも、客足が爆発的に伸びる事もなかったはずだ。
この作品が、歌舞伎への、また原作への架け橋になるかもしれない。
また舞台を見た人からすれば、映画への扉かもしれない。
実に、シネマ歌舞伎でやる意味のある作品だったと思う。
素晴らしかった。この作品に関わった、すべての人に、感謝の拍手を贈りたい。