アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たちのレビュー・感想・評価
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精神の崩壊と開放
19世紀末のイングランドを背景に、ゴシック色が全面に感じられる、エドカー・アラン・ポーの短編小説原作の、サイコ・スリラー。スリラーと言っても、ゴーストやモンスターが出てくるのではなく、山奥深くのホーンテッド・マンションの様な精神科病院を舞台に、怪しげな医師と管理者、そして、入院している様々な症状の精神患者の醜態が、怪しさと不気味さを煽ってくる。
ラストには意外性のあるオチが用意されており、誰もが「エーッ!」と騙されると思う。その布石は、ちゃんと前半部分にあるのだが、多分、その部分を見抜ける人は、なかなかいないだろう…。それだけに、クライマックスに来て二転三転、そして四転と立場が入れ替る展開は、最後まで見応えのあるミステリーと言えるだろう。
精神科医の医学生であるエドワードは、現在の監禁治療方法に疑問を抱き、より質の高い医療方法を学ぶために、山奥のストーンハースト病院を訪れる。そこでラム院長の指示の元、自由な生活環境の中で、投薬もしない患者への治療を学ぶ。そんなある日、地下から物音がするのが聞こえたエドワードは、音の出所を確かめに行くと、地下牢の中に多くの人が閉じ込められ、助けを求めていた。そこからは、この病院に隠された仮面が徐々に剥がされ、ラム院長や閉じ込められていた人々の正体が明らかになった時、恐ろしい闇の世界が露になっていく。
その中で、エドカードと入院患者の1人である美しい女性・イライザとの恋愛模様が、実は本作の大どんでん返しキーポイントとなるのを注目して観て欲しい。また本作には、戦争現場での忌まわしいトラウマが、深層心理に刻み込まれている事が、重くのしかかってくる。
主演のエドガードを演じたジム・スタージェス、個人的にはあまり馴染み無いが、英国紳士らしい振舞の中で、実は難しい役どころを演じていた。脇役には、『アンダー・ワールド』のケイト・ベッキンセール、『ハリーポッター』シリーズのデビッド・シューリン、『ガンジー』でアカデミー賞を受賞したベン・キングズレー、そして、『バットマン』の執事役でもお馴染みのマイケル・ケインと言った豪華俳優陣が務めている。
【”想いを抱いた女のために青年が行った事。そして、哀しくも恐ろしき戦争によるPDSD。"エドガー・アラン・ポー原作の19世紀末の精神病院を舞台にした、捻りの効いたサスペンス・ミステリー。】
■1899年イギリス。
オックスフォード大の学生エドワード(ジム・スタージェス)は、精神科医としての実習を積むべく、辺境の地にあるストーンハースト精神病院を訪れる。
この病院ではサイラス・ラム院長(ベン・キングズレー)の下、患者も医師と一緒に食事をし、投薬もされず自由に生活していた。
◆感想<Caution! 思いっきり、内容に触れています。>
・今作には幾つもの捻りが仕掛けれている。詳細には記さないが最初の捻りは、サイラス・ラム院長の診療方法である。
今作でも言及されているが、当時の上流社会に属していた精神病患者は、今作のイライザ・グレーブス(ケイト・ベッキンセイル)のように夫の仕打ちに耐えられなくなり夫を傷つけたような夫人を”家の恥”として、精神病院に入れる事もあったそうである。
ー 更に言えば、当時の精神病院の治療方法は今作でも描かれているように、可なり酷いモノであった・・。
つまりは、本来の院長であったベンジャミン・ソルト(マイケル・ケイン)の治療方法に対し、”精神病患者”達が反発したのであろう。
そして、サイラス・ラム院長がベンジャミン・ソルト元院長に施した治療・・。シニカルである。-
・サイラス・ラムの哀しき過去も、彼らの秘密を知り囚われたエドワードが、ベンジャミン・ソルト元院長から教えられた彼の処方箋を読んだ事で、電気ショックを受ける前に”或る写真”を彼に見せた事で、ラムの自我が崩壊するシーンで明らかになる・・。
ー 戦争のPDSDの恐ろしさ・・。-
・一番驚いたのは、矢張り誠実で篤実な精神科医エドワードの本性が分かるラストであろう。イライザ・グレーブスの愚かしき夫と共にやって来た精神鑑定医(ブレンダン・グリーソン)の名前・・。
<今作は、ラスト、エドワードとイライザ・グレーブスがストーンハースト精神病院を抜け出し、別の精神病院で楽しそうに踊る姿も印象的な、捻りの効いたサスペンス・ミステリーである。>
何気に観たらめちゃくちゃ良かった
エドガーアランポー原作なら面白そう、と思って見てみたら大当たり。二転三転するストーリーに惹き込まれます。
全然話題になっていないのがもったいない。評価されるべき映画なのに。
マイケルケインが
ビリビリされて精神患者になってしまった。
そんな簡単に記憶を失うとは。
しかし二転三転なかなか見どころのある内容だった。
精神病院、ベンキングスレーが院長とかだとどうしてもシャッターアイランドを連想してしまいそのせいで大オチがなんとなくその視点で見てしまったのでやっぱりなあとあまり驚けなかった。
まず、病院ついてすぐあの夫人に恋をするのも違和感あったしね。
そして結局居場所は精神病院なのか。
退院してもまた行くんかい!
ブレンダン・グリーソン祭りーその4
初っ端から登場して、テンション上がったもののそのあと全然出てこない…。そしてラストで。
原作未読だが、まんまとしてやられた。マイケル・ケインとベン・キングズレーの方に釣られた。
ただのサイコパススリラーではない?!
本作品はジム・スタージェスを主人公として描かれているが、私的にはパッケージの4人それぞれが主人公であると感じる。それぞれの人物の過去の出来事が上手く劇中にちりばめられており、ストーリーの繋ぎがとても綺麗である。
サイコパススリラーとは言え、その裏に隠された人間の罪や愚かさから込み上げる羞恥心を描いている点が大変素晴らしい。
でもやはり、サスペンス映画なだけ最初のシーンから最後のシーンまで見逃せない。
闇を照らす光
人には誰しも忘れたい過去と、忘れたくない想いがある。
ある者はそこに恐怖の芽を植え、またある者はそこに希望の芽を植える…
本作に出てくる精神病患者も人間として扱われることを望んでいるように見えた。彼らにとっての幸せは何なのかは分からないが、心に傷を負っている者にとって自由に扱われることは何より幸せなことのように思う。
ミステリー的な要素を追いながら観ていなかっただけにラストの展開には少し驚いたが、仮に彼が病気だとしても現代で普通に暮らしていけるような感じがした。
精神病院の医者と患者
精神病院に新しい医者がやってくる。
院長(ベン・キングズレー)が応対するが、患者は多いのに他に医者はいないようで看護婦もなんかおかしい。
患者に美しい上品な女性(ケイト・ベッキンセール)がいて、新任医師は心を奪われる。
スリラーの定石で、ケイト・ベッキンセールの美しさがすべて。
面白い
なかなか見ごたえのある作品だった。
アサイラム=精神薄弱者などの保護施設の意味。
精神的な病を持っている人のことは、普通に生活しているとあまり考えないところ。
人を殺してしまったり、家族などに耐え難い不幸が起きたり、人によって様々だが、過去のトラウマなどが原因で頭のネジが抜けてしまっているような状態になっている人たちがたくさん出てきていた。
専門家でもなんでもない素人なので、どのような治療法があるのかは全くもってわからないが、思考が猟奇的な方向に向かってしまったりするケースも多いとすれば犯罪性が高く、とても大変なことだと思う。そういう意味でいろいろ考えさせられた。
最後まで展開が読めないところも見ている者を飽きさせない配慮が見られる。話に小さな伏線はないが、テンポよく、時には不安になりながら進んでいく感じは、こういうのが好きな人にはたまらないのかも?
思わず膝を打った佳作
人里を離れ、門の奥に姿を見せる19世紀末の精神病院。
そこに君臨する王たろうとする二人の名優の存在感。
非人道的な処置を施してきた精神科医療の歴史が背景にあり、患者と健常者との境界線の曖昧さや対照的な治療法の狭間で見事に揺さぶられた。
それぞれや病院の「正体」は比較的すぐに明かされるが、そこから単に観客を騙すのではなくその先に踏み込んでいく様に惹き付けられる。
主人公エドワードも人間味ある“研修医”として共感を呼ぶ。
J.スタージェスは勿論、K.ベッキンセールやB.キングズレーら豪勢キャストも見応えがある。
一捻りあって迎える着地点も粋だ。
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