「精神の崩壊と開放」アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
精神の崩壊と開放
19世紀末のイングランドを背景に、ゴシック色が全面に感じられる、エドカー・アラン・ポーの短編小説原作の、サイコ・スリラー。スリラーと言っても、ゴーストやモンスターが出てくるのではなく、山奥深くのホーンテッド・マンションの様な精神科病院を舞台に、怪しげな医師と管理者、そして、入院している様々な症状の精神患者の醜態が、怪しさと不気味さを煽ってくる。
ラストには意外性のあるオチが用意されており、誰もが「エーッ!」と騙されると思う。その布石は、ちゃんと前半部分にあるのだが、多分、その部分を見抜ける人は、なかなかいないだろう…。それだけに、クライマックスに来て二転三転、そして四転と立場が入れ替る展開は、最後まで見応えのあるミステリーと言えるだろう。
精神科医の医学生であるエドワードは、現在の監禁治療方法に疑問を抱き、より質の高い医療方法を学ぶために、山奥のストーンハースト病院を訪れる。そこでラム院長の指示の元、自由な生活環境の中で、投薬もしない患者への治療を学ぶ。そんなある日、地下から物音がするのが聞こえたエドワードは、音の出所を確かめに行くと、地下牢の中に多くの人が閉じ込められ、助けを求めていた。そこからは、この病院に隠された仮面が徐々に剥がされ、ラム院長や閉じ込められていた人々の正体が明らかになった時、恐ろしい闇の世界が露になっていく。
その中で、エドカードと入院患者の1人である美しい女性・イライザとの恋愛模様が、実は本作の大どんでん返しキーポイントとなるのを注目して観て欲しい。また本作には、戦争現場での忌まわしいトラウマが、深層心理に刻み込まれている事が、重くのしかかってくる。
主演のエドガードを演じたジム・スタージェス、個人的にはあまり馴染み無いが、英国紳士らしい振舞の中で、実は難しい役どころを演じていた。脇役には、『アンダー・ワールド』のケイト・ベッキンセール、『ハリーポッター』シリーズのデビッド・シューリン、『ガンジー』でアカデミー賞を受賞したベン・キングズレー、そして、『バットマン』の執事役でもお馴染みのマイケル・ケインと言った豪華俳優陣が務めている。