「イタリアを舞台にしたスクリューボール・コメディ・・・にはなりきれなかった。」ローマ発、しあわせ行き 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
イタリアを舞台にしたスクリューボール・コメディ・・・にはなりきれなかった。
20年ぶりに訪れたイタリアの地でかつての恋人と再会し・・・なんて分かり易いロマコメかと思いきや、実際うまみのあるストーリーは主人公の娘サマーが握っていると言っていい。問題児の娘がひょんなことから結婚式を控えた老婆をローマへ連れていくことになり・・・という物語の方がよっぽど映画的で充実感がある。ティーンエイジャーの娘と老婆という組み合わせの妙も愉快だし、世代も価値観も違う者同士がなぜか通じ合う感じも、描きようではなかなか粋なものになり得たと思うのだけれど、肝心のサラ・ジェシカ・パーカーの方の物語が全然活き活きせず、バランスが悪いなぁという印象。「老婆の結婚」というキャッチーさに対して、サラ・ジェシカたちが演じるストーリーがあまりにも凡庸なロマコメでしかないのが弱いのか。
とは言え、仮にこの映画が本当にティーンエイジャーの娘と老婆の二人が繰り広げるロードムービーだったとしても、それは決して楽しいものではなかっただろう。何しろ、この映画がやろうとしていることがただのドタバタコメディのようなものに過ぎず、ガソリンを盗もうとして火事を起こしてしまうことに象徴されるような下らない展開しか待っていないのだから。重要な結婚式のシーンでさえ、バカげたケンカで老婆を突き飛ばして病院に運ばれる、なんて不愉快な展開に発展してしまう。素行の悪い娘そのもの自体も決して快いものではないが、彼女を逮捕する展開ももやもやするし、ジョークが全体的にコメディとして笑い飛ばせるような軽快さを持っていないのが何より残念だった。
こういう作品を見ると、「スクリューボール・コメディ」と「ドタバタコメディ」って似ているようで全然種類が違うよね、と改めてコメディの難しさを思う。