シュガー・ブルース 家族で砂糖をやめたわけのレビュー・感想・評価
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ためになる話
砂糖の有害性に関するドキュメンタリーは他にもあるが、糖尿病に
掛かり、しかも妊娠中のために子供にまで悪影響を与えてしまったという、ショッキングなイベントを出発点として、母親として如何に生活から排除していくか、結論や方法を考え出すまでを描いた、新しいタイプの映画だったように思う。
時代に連れて過剰摂取になってしまったがために砂糖の持つ悪影響が目立つようになった。勿論(精神的にリラックスさせるなど)良い面もあると思うのだが、その適量を守ろうと思うと現代環境では難しい。そのため、完全に砂糖フリーの生活をしようと思うと、周りの人々(家族でさえも)にも変な目で見られる…
砂糖が身体の中でどう動くから悪い、といった学術的な内容ばかりでなく、上記のジレンマのようなリアリティーある話がどちらかと言えばメイン。これは、監督が一人の母親であり、家族の健康を支える立場にあるからこその構成だと感じた。
砂糖病とその社会的背景
砂糖の身体に対する悪影響を分かりやすくレポートしています。監督・主演のアンドレア・ツルコヴァーのシュガー・フリーの生活やデモ活動の様子も描かれています。映画のタイトルは、40年前に出版された『Sugar Blues』という書籍にちなんでつけられたものです。既に砂糖の危険性は記されていましたがいつしかその声は聞かれなくなり、多くの砂糖があらゆる形で食品に混ぜらせて出回っています。何故これだけ危険な砂糖が安全と謳われて出回っているのかも取材しています。経済の自由主義がもたらす私たちへの被害を考えさせられました。
健康は一度病いに犯されると完全に元に戻すことは難しいものです。なってからではでなく、平常にかけがえの無い心身を傷つけないよう心がけなければいけないと感じました。
砂糖を摂取する代価
公開日に鑑賞。
翌日ならツルコヴァー監督の舞台挨拶があった(@横浜シネマリン)との事、残念。
砂糖をやめるという事はどういう事なのか、気になって公開までの日々を悶々と過ごしていました。
精製された砂糖の健康への影響は多少知っていましたが、日本よりもっと多量の砂糖を摂取するであろうチェコ(砂糖輸出大国とは知りませんでした)の人々の具体的な食、そして砂糖への依存を見て衝撃を受けました。
弊害がこんなにも目に見える形で人体へ出ているなんて。
一度は指摘された砂糖の危険性は、おそらく利権が絡んだ業界のチカラによって「安全である」とアピールされ、今に至ります。(日本でも砂糖を摂ろう、というCMがありましたよね)
人々は安心して砂糖を摂取し、2度と食生活を省みようはしません。そして少しずつ蝕まれ、その弊害は次の世代へ持ち越されてゆくのです。
ひたすら恐ろしい。
映画を観た直後は一切砂糖を摂りたくなくなりました。が、私達の食生活は既に多量の砂糖に塗れており、日常生活を送りながらツルコヴァー監督一家のように、徹底的に排除するのは困難です。
以前、添加物の危険性について書かれた本を読んだことがありますが、その時と似たような恐怖を感じました。
砂糖や添加物を用いない安全な食事を作ることは、実はとてもとても手間のかかること。コンビニやスーパーの惣菜、ファミレスやチェーンのファストフードで提供される食べ物がなぜ安いのか。それは人間の手間を添加物で補っているからです。
対価として、私達は自らの健康を差し出しているのです。
惣菜であれば買う前に、容器の裏を見てみる事をおすすめします。恐ろしい量の添加物がシールに明記されていますから。
砂糖も同じこと。
継続して消費者に購入させるよう中毒性をもたらす味の比率を見極め、砂糖や添加物で味付けし、消費者の健康と代金を対価に販売する。
日本に暮らす以上、砂糖や添加物からは逃れられません。食事に余程の手間と時間とお金をかける覚悟がない限りは。
危険性のあるものを全て排除することは不可能に近いです。ならばなるべく摂取量を少なくするしかありません。
昼食のお弁当だけでも手作りにして、既製品を使わないようにした所、しばらくしてカップラーメンやファストフードが欲しくなくなりました。嫌な味が口に残るのが気になるからです。
ツルコヴァー監督に会えたら、末のお子さんがその後どうなったのか聞いてみたかったです。それこそが答えのような気がして、とても気になっています。
「食卓から始めた革命」
このドキュメンタリーの主人公は監督自身でもあるチェコの女性ドキュメンタリー映画作家、アンドレア・ツルコヴァー。
彼女と彼女の家族たちのセルフドキュメンタリーだ。
物語は、三人目の子供を妊娠した時アンドレアが「妊娠糖尿病」になってしまったのをきっかけに、彼女と家族たちが一切の砂糖を断つことから始まる。
砂糖がいかに人体に悪影響を及ぼすのか、彼女は世界各地の研究者や活動家にインタビューしたり自らデモなどを積極的に起こす。
現代を生きる人達は、彼女の様に何かを契機に徹底的な砂糖断ちをしない限り砂糖から逃れられないだろう。それほどまでに依存してしまっているのが伝わってくる、生々しく表現豊かな映像だった。
しかし、個人的には自分も砂糖断ちをしようという風に感化されるほどの影響はなかった。
というのも、アンドレアは砂糖断ちをしている人達を重点的に取材しており、またその全ての人達が砂糖をかなりラディカルに批判している印象が強く「砂糖は人を殺す」という過激な表現を多くピックアップしているあまり、見る人に「多くの人とは違う一部の人達の活動」と受け取られやすいのではないかと思う。
アンドレア自身、自らに妊娠糖尿病という大きな病気であり人生を変えるほどの出来事が起きるまではかなりの砂糖中毒であった。彼女は砂糖中毒である現代人をひたすらに「やめるべきだ」としているように見えたが、なぜこれほど多くの人が砂糖に執着しているかを「食品メーカーの陰謀」だけに焦点を当てず、もっと掘り下げた内容で追及した方が、人々に訴える力があったのではないかと思う。
取材力や自らの問いへの探究心、映像表現のすばらしさの備わった内容だからこそ、そこの点だけ少しひっかかりがあった。
一見の価値あり。
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