「「食卓から始めた革命」」シュガー・ブルース 家族で砂糖をやめたわけ イワシ御殿さんの映画レビュー(感想・評価)
「食卓から始めた革命」
このドキュメンタリーの主人公は監督自身でもあるチェコの女性ドキュメンタリー映画作家、アンドレア・ツルコヴァー。
彼女と彼女の家族たちのセルフドキュメンタリーだ。
物語は、三人目の子供を妊娠した時アンドレアが「妊娠糖尿病」になってしまったのをきっかけに、彼女と家族たちが一切の砂糖を断つことから始まる。
砂糖がいかに人体に悪影響を及ぼすのか、彼女は世界各地の研究者や活動家にインタビューしたり自らデモなどを積極的に起こす。
現代を生きる人達は、彼女の様に何かを契機に徹底的な砂糖断ちをしない限り砂糖から逃れられないだろう。それほどまでに依存してしまっているのが伝わってくる、生々しく表現豊かな映像だった。
しかし、個人的には自分も砂糖断ちをしようという風に感化されるほどの影響はなかった。
というのも、アンドレアは砂糖断ちをしている人達を重点的に取材しており、またその全ての人達が砂糖をかなりラディカルに批判している印象が強く「砂糖は人を殺す」という過激な表現を多くピックアップしているあまり、見る人に「多くの人とは違う一部の人達の活動」と受け取られやすいのではないかと思う。
アンドレア自身、自らに妊娠糖尿病という大きな病気であり人生を変えるほどの出来事が起きるまではかなりの砂糖中毒であった。彼女は砂糖中毒である現代人をひたすらに「やめるべきだ」としているように見えたが、なぜこれほど多くの人が砂糖に執着しているかを「食品メーカーの陰謀」だけに焦点を当てず、もっと掘り下げた内容で追及した方が、人々に訴える力があったのではないかと思う。
取材力や自らの問いへの探究心、映像表現のすばらしさの備わった内容だからこそ、そこの点だけ少しひっかかりがあった。
一見の価値あり。