「.」淵に立つ 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅(CS放送)にて鑑賞。後を引くビターな物語で、オルガンの音色がオープニングとエンディングで用いられている。あくまで写実的で現実のみを写した前半と対照的に八年後となる中盤~(特に)後半にかけて、幻想的なショットが増え出し、やや間延びした感がある。特に水中からのショット以降は微妙。起承転結で云えば、いきなり八年後に舞台が飛ぶ「転」がピークを成し、展開を含めやや尻すぼみな印象で残念な思いが残る。唐突に迎えるラストに限らず、詳細を意図的に省略したと思われる作りをどう捉えるかで評価が分かれる。65/100点。
・突き放した様な遠景が多く、その分表情が読めるアップが意味有り気に映える。食事時に交わされる犠牲と罪を説く蜘蛛のエピソード、しがみ付く猿と銜え運ばれる猫と暗喩的に宗教論がちりばめられており、深読みが出来る内容となっている。
・浅野忠信演じる“八坂草太郎”をメインに書くと態度を一変させる際、露呈させるアンダーシャツと幻想に登場するシャツの色、篠川桃音の“鈴岡蛍”を初めて見掛けた際に後ろ姿で揺れるランドセルと発表会用のドレス、“鈴岡章江”の筒井真理子と赤い花の下での初めてのキスシーン等、赤色が先に起こる不吉な暗示であり、不気味な記号として用いられている。
・潔癖症に陥った八年と云う歳月を10数キロと云う体格変化で表現した“鈴岡章江”の筒井真理子、“八坂草太郎”の不気味な微笑みと存在感、どこにいても所在無げでありつつ含みのある古舘寛治の“鈴岡利雄”、一見礼儀正しく誠実乍ら本心が見えない父親の一面を彷彿させる太賀の“山上孝司”と作り込まれたキャラクター設定とそれに応える演者達により本作は成り立っている。
・鑑賞日:2018年2月24日(土)