「家族という名の迷宮からの脱出」淵に立つ バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
家族という名の迷宮からの脱出
世界共通かは知らないが、家族というのは仲良く助け合う、愛と慈しみに溢れた状態が理想とされている。自分自身の経験からも、家族は呪われた呪縛のようでもあるが、同時に心が安らいだり支えてくれたりするものだと思ってきた。
が、『淵に立つ』が提示するのは、そんな常識が通用しない家族の姿だ。家族同士が憎み合ったり崩壊したりする話も世の中にゴマンとあるが、そのどれとも似ていない。なぜなら、そもそも家族はこうあるべきという概念が、この映画にはサッパリ感じられないのだ。
家族という形態に向けた不信感のようなものは、深田監督の多くの作品に共通しているが、常識的な倫理観をハナから受け付けないこの映画は、とても「自由」だし刺激的だ。
普通に共感しづらい物語やキャラクターを、みごとに演じてみせた役者陣も素晴らしいし、ちゃんと自分のビジョンを貫き通した深田監督の作家性にも拍手をおくりたい。
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