劇場公開日 2016年8月20日

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「大木のように、寒青の如く」健さん 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大木のように、寒青の如く

2017年5月6日
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鑑賞方法:DVD/BD

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高倉健のドキュメンタリー映画。
国内外の多くの著名映画人やプライベートで親交のあった人々が高倉健について語る。

名コンビで知られる降旗康男を始め、山田洋次、梅宮辰夫、まだ現役バリバリの八名信夫ら錚々たる面々。
興味深かったのは、海外の映画人の証言。
一緒に仕事をした事のある「ブラック・レイン」のマイケル・ダグラスやヤン・デ・ボン、「ザ・ヤクザ」のポール・シュレイダーらは勿論だが、直接仕事をした事はないが親交のあったマーティン・スコセッシやジョン・ウーら。
高倉健主演で映画を一本撮りたかったという“映画人”的な思いの傍ら、高倉健に憧れ、高倉健に魅了されたと語るその姿は、彼らは現代の映画界を代表する名匠であっても、高倉健を見る時は我々一般人と全く同じ視線。
そんなスターはそうそう居ないだろう。

印象的なのは、映画俳優・高倉健としてではなく、一人の男・小田剛一としての素顔。
長年の付き人や実の妹の証言は貴重だ。
実の妹が語る亡き母への想い。
生涯で唯一愛したと言われる元妻・江利チエミとの関係。
そこには確かに、我々の見た事の無い小田剛一としての姿が浮かび上がった。

所々肉声も流れるが、構成としては、撮影中やオフ、プライベートでの写真。
“映像”としてはワン・シーンくらい。(このシーンは付き人だったから残ってる超貴重映像!)
写真のワン・ショット、ふとした表情なのに、映画の中に、中心に、高倉健の存在感を感じる。

今もちょくちょく高倉健主演の映画を見る事あるが、やはりその佇まいは格別だ。
映画との出会いは人との出会い、と語る高倉健。
その一期一会を大事にしたという。
確かにどんな役でもこなせる器用な役者ではなかった。
しかし、どの映画でも高倉健は高倉健として中心に根を下ろし、その懐の広さ、温かさ、美しさ、孤高さを感じさせる。
本人が好きだったという“寒青”の如く。
だから親交のあった人々も、我々観客も、親しみを込めてこう呼ぶのだろう。

健さん、と。

近大