「心情表現が乏しく、ダイジェスト感しかない」劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] I. presage flower 、、さんの映画レビュー(感想・評価)
心情表現が乏しく、ダイジェスト感しかない
映画の前にHFルート再度プレイして、
期待も最高潮だったのに興ざめも甚だしい。
※以下ネタバレ含む感想です。
・冒頭からセイバーとの契約シーンまでの割愛
→桜ルートとはいえ、物語の中枢から時間経過によって徐々に在り方を変え、強固になっていく士郎とセイバーの信頼関係、心境の変化は外して欲しくない要素だった。
このシーンが省かれたということは、恐らく最終章のセイバー戦で対等に勝負を行えることへの喜び、無垢な信頼を裏切り桜を優先する事への葛藤も省かれると予想されるため残念で仕方ない。
劇中最大の見せ場と言っても過言ではない重要なシーンへの布石なだけに悲しい。
・夜な夜なセイバーと士郎が出かけて、何か危険なことに首を突っ込んでいることを示唆する描写の少なさ
・そのことに気づいて士郎を心配していながらも、面と向かってやめて欲しいと言い出せない桜の葛藤→その後セイバーとの深夜徘徊で士郎が怪我(魔力喪失による一時的な生命力の低下)をしたことで桜がセイバーを叱責→ハッキリと言葉にして士郎に気持ちを伝えなかったことへの桜の後悔→柳堂寺戦闘でセイバー敗戦後に士郎だけは何とか帰宅→またしても士郎を止められなかったことへの後悔と傷を負いながらも帰宅した士郎を見た安堵、再会の喜び(桜視点)
までの心理描写が皆無なため、原作を知らない一見さん視点だとラストシーンの涙の抱擁が全く心に響かない。
・間桐桜とかいう友達の妹(赤の他人)が理由もなく突然怪我人の家に世話役として上がり込む謎
→それに対して伏線すら張らない点にやる気の無さを感じる。お前、絶対説明挟むつもり無いだろうと言いたい。
・間桐邸の修練場(虫蔵)発見時の凜の嫌悪表現からは単なる虫嫌いなのかな?という印象しか感じない。
修練内容のおぞましさの一端を垣間見れる描写でも無いことにはこのシーン挿入の意味が分からない。
・士郎の度が過ぎた自己犠牲精神、その異常性を試すようなワカメの意味深な態度が誇張され、その精神性を嫌悪している描写が色濃く描かれ過ぎている。
→違うんだ家のワカメはそんな善人オーラを出したりしない。端から見てるとただ卑屈でやたらモテて士郎に突っかかってくる面倒な輩じゃなきゃダメなんだよ。意図せず(他人から見れば意図した行動に見えるが本人に自覚は無い)行動の結果として士郎の目に見えないところで士郎に害なす人間を貶める、隠れ良いやつポジションの熱い存在、そんなワカメを辞めないで欲しい。こんな薄っぺらいワカメは嫌いだ。
・ランサーと真アサシンの戦闘描写は熱かったが、何より荷台が大惨事となっていながらも全く運転の手を休めないキャリアカー運転手のメンタルの強さに驚愕した。
・キャスターの私服姿が見れたのは高評価
・泰山のお子様店長が描かれていたのも高評価(CV.田村ゆかりで追加注文のマーボー確認してこなかった点だけが唯一の気がかり)
・神父が教会で懇切丁寧に長々とおしゃべりしていたシーン、その後すぐ親身に知人の治療を行ってくれた描写の印象が強いせいで神父に対して、寡黙で取っつきにくく、他人の心の傷を開く、何を考えているのか分からない心に闇を抱えた危険な奴という印象が無い。
そのせいで泰山入店時に神父がマーボーを食べていることへの衝撃が殆ど無いのが残念。
本作には言峰綺麗の人間性を掘り下げるという側面も有るので、普段見せない言峰神父の言動をクローズアップしてその異常性を強調して欲しい。映像主体のため文字表現とは異なり、日常パートにこっそり紛れ込ませるだけではインパクトに欠ける。
【総評】
外面の表情、動き、エフェクト、背景はよく凝って作られており素晴らしい完成度と言える。ただし、それが全て。
人物の内面が描かれておらず、ストーリーの流れ、どうして次の展開に発展したのかが曖昧になってしまっている。
綺麗な映像を眺めて心を癒されたい方にだけおすすめします。ストーリーは綺麗な映像をつなぐためだけのおまけです。