劇場公開日 2017年2月11日

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「【初見時にはグザヴィエ・ドランは、難解な領域に足を踏み込んだなと思ってしまった作品。だが、その後見返すと見事なる家族の葛藤を描いた作品であると思った作品である。】」たかが世界の終わり(2016) NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【初見時にはグザヴィエ・ドランは、難解な領域に足を踏み込んだなと思ってしまった作品。だが、その後見返すと見事なる家族の葛藤を描いた作品であると思った作品である。】

2022年3月11日
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鑑賞方法:DVD/BD、VOD

悲しい

知的

難しい

ー グザヴィエ・ドラン監督が「家族」をテーマに新境地を開いた濃密な会話劇。フランスを代表する実力派スターが共演し、感情を激しくぶつけあう演技合戦を繰り広げる。ー

■「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために、12年ぶりに帰郷した人気作家のルイ(ギャスパー・ウリエリ)。
 彼の長きに亘る不在に慣れていた家族の戸惑いと喜びと怒りを、長兄アントワーヌを演じるヴァンサン・カッセル、その妻カトリーヌを演じるマリオン・コティヤール、妹シュザンヌを演じるレア・セドゥが、夫々の立場で、ルイに対する想いを表明する。
 久しぶりに家族で食卓を囲みながらも、ひたすら続く意味のない会話。
 ルイはデザートの頃には自身の境遇を打ち明けようと決意するが、兄アントワーヌの激しい言葉が頂点に達した時、それぞれが隠していた思わぬ感情がほとばしる。

◆感想

 ・初見時には、豪華絢爛なスターが集まりながらも、散漫なイメージがあった。

 ・だが、「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」が公開される前に今作を見返すと、そのイメージは覆った。

 ・家族の中で、ゲイとして名を上げながら音信普通だった男が久方ぶりに実家に帰ってきた時の家族それぞれの想いがキチンと描かれていたからである。

 ・特に、長兄を演じたヴァンサン・カッセルの苛立ち振り、妻を演じたマリオン・コティヤールの抑制した演技。素直に兄の帰還を喜ぶ妹シュザンヌを演じるレア・セドゥの姿は見事である。

<母、マルティーヌの息子が久方ぶりに帰ってきた理由を問わずとも、その哀しき意味合いを理解する態度。
 ルイが、最後まで自身の境遇を言い出せずに、実家を長兄から追われるように出る姿。
 これは、私見であるが長兄アントワーヌは、ルイが久方振りに戻って来た理由を母と共に、薄々感じていたのではないか・・。
 そして、その事実を受け入れ難いために、敢えてルイに対し、粗暴な言葉で追い出そうとしたのではないか・・、と思った作品である。
 ルイ=グザヴィエ・ドラン監督に見えてしまったのは、私だけであろうか・・。>

NOBU
きりんさんのコメント
2022年3月12日

25歳でこんな映画を撮ってしまうドランが恐ろしい。
深部まで見透かされていて、家族にはなりたくないタイプです。
原作は舞台劇のようですね、だから役者たちが凄まじい演技を繰り広げるさまに僕は釘付けでした。
そして各人、わけても長兄の噴出するわだかまりとか、甘えたかった気持ちとか、そしてもしかしたら糾弾=弟を叩き出す形で死の近い弟への悲しみと弟への激励・見送りも表していたかもしれない兄の優しさとか・・。
人間の人生の複雑さをここまで炙り出すのかよ!と圧倒されました。

NOBUさん、最近の鑑賞量が尋常ではないですね・・お体ご自愛ください。
きりん

きりん