「家族みんなで観るのにちょうど良い」92歳のパリジェンヌ きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
家族みんなで観るのにちょうど良い
「最強のふたり」を思い出しました。共にフランス映画です。
本作は女性編ですが、2つの映画とも移民のヘルパーにどれだけか、ユニークに心身共に、支えられたかというストーリー。
自立した女はフランス映画の鑑。
ヘルパーのヴィクトリアが、信頼できてごっつ魅力的!とかく煮詰まってしまう家族の中にいつも彼女が新風を吹き込んでくれる。
まさに「救いは外からくる」ですね。
「終活」のイメージトレーニングに、この映画はとてもいい教材じゃないかな?
家族のリアルな慌てぶりは、我がこととして勉強=予行演習になるので。
母親の“決意”にうろたえる息子と、娘と、孫とお婿さんと。彼ら家族全員のショックと成長が、その年代別に、そしてその立場ごとに、丁寧に描かれていてとてもいい。
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みんないつかは、自分も家族も100%死にますよね。
そうだと知っているのに、看取りも、自身の死も、みんな嘘のように覚悟なし。
こんなに大きな課題なのに、僕ら無責任だったなぁと改めて教えられました。
ほら、
来週の計画を手帳に書き込むように、ちゃんとスケジュールを立てなくちゃね。
(あと、部屋のお掃除とかも、笑)。
むかし特別養護老人ホームに勤めていた僕なのですが、失禁の始まったお年寄りへのフォローは、とても大事な役割でした。
「気にしない気にしない、大丈夫大丈夫、何度でも何度でも、笑顔と、ハグ、
・・安心して僕を呼んでね」。
そんなホームでの生活を久しぶりに思い出しました。
母親の“決意”に苦しむディアーヌを、その気持ちを察して訪ねてきてくれる看護助手の青年。
一緒に走るスタジアム。
寄り添うって、これだよね。素晴らしいシーンです。
そしてもうひとつ、
母子の珠玉の会話です
私が手を離さないかと怖がっていた
今でも怖いわ
落ちそう
大丈夫よ
離さないでね
離さないわ
怖い
怖くないわ
お母さんがむかし娘に約束した言葉を、今は娘が母に語ります。
本当に宝石のような会話です。
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安楽死やら、もうすぐ訪れる僕の両親の終わりの日々についても、新しい情報や心準備のために、いろいろと知識の“上書き”もしてもらえたとても良い作品でした。
家族みんなで、リビングで観るとか◎だと思います。
今晩は。
コメント有難うございます。
きりんさんのレビューはいつも優しき視点及び実体験で書かれており、素敵だなと想いながら拝読しています。
今作は実話ベースの尊厳死を扱っていますが、私事で恐縮ですがGW中に義父の親族(一度しか、お会いした事が無い方でした。けれど、義理は欠かして駄目だと思い、映画他全ての予定をキャンセルして出席しました。)の葬儀に参列しました。
僧侶の方が”故人は直前まで家の手伝いをされていました。家族から止められても”私の仕事だから”と言って・・。”と法要後に仰られた言葉が心に残り、”尊厳死って、その方の人生に対する考え方によって違うのだな”と思ったのです。
私は安楽死については、私なりの考えを持っており万一の際の文を認めていますが、若造には尊厳死のコメントをするのは難しいなと思った作品でしたね。では。