「テレンス・マリックが目指したものは?」聖杯たちの騎士 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
テレンス・マリックが目指したものは?
言うまでもなく、テレンス・マリックは『ツリー・オブ・ライフ』で現代最高の映画監督の一人として賞賛を獲得するに至った。だが、その後に続く『トゥ・ザ・ワンダー』から本作『聖杯たちの騎士』への移り変わりの中では、簡単に文字へ落とし込めるような物語性に執着しない“独自の話法”を求めて広い荒野を彷徨っているようにも思える。もしくはエマニュエル・ルベツキという現代最高の撮影監督による有機的映像の連なりを使って、“心象を綴る”ことのさらなる可能性を突き詰めたいと考えているのだろうか。いずれにしても本作は、クリスチャン・ベイルやケイト・ブランシェット、ナタリー・ポートマンという名優を配しながら、その心象世界へ没入するには深度がやや足らず、観客に自分が今いる位置をすっかり見失わせてしまう場面も多い。数ある彼の劇場作品の中でも最も娯楽性の枠から解き放たれ、映画をもっと幅広く捉えたアートな立ち位置にある一作と言えるのかもしれない。
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