「危うい感動」しゃぼん玉 Rewind Thatさんの映画レビュー(感想・評価)
危うい感動
大変感動的な作品で思わず嗚咽が漏れてしまいました。
しかし、強盗致死障害はどうやらハンパな罪ではないようです。そこまでの罪を犯した人間を、鑑賞者が色眼鏡で見ることをしないと言うのは少し安易な予測ではないでしょうか。つまり、この映画は鑑賞者が坊は本当は善人であるという確信をもたなければ成立しない映画であると思います。
自分も途中まではこの野良犬がいつまで良い子のふりが続くか疑問だとワクワクしていました。しかし、ストーリーの進み方からしてそういう展開はなさそうだと感じ、じゃあいつどう改心するのかを待ち始めます。
最初の食事のシーンからしてあまりリアリティがあるとは言い難いですね。自分の中にある恐ろしく醜い偏見ですが、ああいった思慮が浅く、人から奪う事になんの抵抗も覚えないような人間は、出された田舎臭い食事を美味い美味いなどといって食べる訳はありません。食べたことのない物は「まずそう」といって決して手をつけず、肉しか口にせず、食後すぐに「はらへった」などと言ってカップラーメンを啜るような食事こそが彼らの現実の食事です。
書いていて思ったことですが、当然本当の善人も本当の悪人もこの世にはいるはずもありません。村の生活と老婆の善性に感化されて良心が芽生えるというストーリーなのでしょうか。そうならば非常に心打たれる素晴らしいストーリーだと感じます。
最後に警察に行くシーンには涙が止まりませんでした。
しかし、現実にはあの田舎で前科者がうまく溶け込める筈もなく、帰ってからが本当の禊、自分の罪の意識と償いというものを心から向き合う地獄になるでしょう。そういったことを考えると、また心が痛み涙が溢れました。
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