「温かさとたくさんの問いかけ。」彼らが本気で編むときは、 ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
温かさとたくさんの問いかけ。
「普通」とは何か。今の世間においては一般的な形ではないのかもしれないけど、トモとリンコさんとマキオの関係は温かく、そこには刹那的だけれど確かな幸せがあった。
形容しがたい、でも好意によって繋がった温かい関係を見せてくれた作品。
リンコさんとトモの関係が良かった。母娘に近いけどまた少し違う、女同士の関係。
トモがいなくなる前夜、布団の中で2人で強がって憎まれ口を叩き合うけど、その後寄り添って泣くシーンがすごく2人の関係を象徴してた気がする。
同じくトランスジェンダーの人物を描いた「リリーのすべて」を観たときも思ったけど、トランスジェンダーの方は、精神と肉体の不一致によって色んな形で自己を否定され続ける苦しみがあるんだろう。それに胸が苦しくなった(私は想像するしかないけれど)。
でも同時にこの作品を観て思ったけど、公共の場における周囲の対応は難しい。
リンコさんやマキオたちに感情移入するとやりきれないけど、病院での出来事(病室の割り振り)等はある意味では正しいと思う。
マキオもトモもリンコさんの人となりを良く分かってるから、リンコさんは中身は女の人だってことがわかるけど、他の人、断片的に接した人にはなかなかそうは映らない。すぐに理解してもらうのは難しい。
病室だと他の女の人もいるわけで、その人たちがどう思うかも考えちゃうと、トランスジェンダーの方の人権も守るべきだと思う一方で、判断規準が難しいのだ。デリケートゆえに難しい。。
私はまだ良い解決策がわからないけれど、少なくともリンコさんが生きやすい世の中になれば良い、そう思う。
トモが分かりやすく「素直な良い子」じゃない(言葉遣い悪いし、変に正義を振りかざさない)のが良かった。
リンコさんもお酒好きで変に女々しすぎず、マキオに対してもさらりと飾らない人なのが良かった。
生田斗真が「風貌は男性の名残を隠しきれない、でも所作は完全に普通の女の人」になっていたのが絶妙。