「さすがベテラン監督」イレブン・ミニッツ Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
さすがベテラン監督
サイバー神が我々をモニターで見ている。スマホ、監視カメラ、犬の目を通して写し出されている。
結局のところ、どんな大事故も小さなモニターの中のひとつの偶発事でしかない。
サイバー神のモニターに大量に集積された映像には、黒点が表れている。
体系が体系たるかぎり属性として含まなくてはならない何ものかである。裂け目のような何か。
そんな必然性の宿命が、我々の自由な日常生活の一部に内包されている。
枕営業、不倫、ポルノ。救助される妊婦の周りには死の気配が漂っている。
性は生命を生み出すと同時に死をイメージさせる。
性的興奮は新しい生命のイメージとは決して馴染めない。むしろ加虐的で自虐的なイメージを持つ。
そして、死の瞬間こそ、生命の燃え上がる瞬間でもある。
カタストロフ、ゼロ時点。言い方は様々あるが、そこへ向かう11分の映画だった。
スコリモフスキは、鑑賞者の期待を裏切り破綻を生じさせて、問いかけてくる。単なる心地良い美や感動を求める人には、この監督との対話はできない。和気あいあいなはずがないのだ。
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