「イタリアでちらし寿司食ったらこんな感じか」皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
イタリアでちらし寿司食ったらこんな感じか
出尽くした感がある、スーパーヒーロー物の変わり種のなかでもとびきりの変わり種。イタリアを舞台に、怪力を得た男が正義に目覚め、人々を救うストーリーで、もし魅力的なキャスティングをそろえ、エフェクトに予算を投入できていればおそらく世界的にヒットしたんじゃないかと思える映画。
イタリア映画で、日本まで伝わってくるものと言えば、エログロナンセンスか、パチモンと相場が決まっているところ、今回は日本のテレビアニメが原作なので好事家の目にとまったようだ。よほどの原作リスペクトがあったか、それとも許諾料が安かったかのどちらかで、たぶん後者のほうだろう。
構図的には、『スーパー!』の頭のぶっ飛んだ少女と、個人的な恨みのために覆面で活動する中年男の奇妙な協力関係によく似ている。
ストーリーは良く考えてあり、どうやって超人になったかの経緯はともかく、さえない中年男が突然怪力を得たら、力をどう使うかを、シンプルにリアルに描いている。ただし、主役の俳優が、どの程度の評価を得ている人なのか全く情報がないので、憶測でしかないが、この映画に備えて、体を絞った様子も、ムダ毛の処理もなく、何ら魅力的なエフェクトも使われておらず。手っ取り早く、もっとアスリート体形の俳優をキャスティングしようと考えなかったのだろうか。それだけで、主人公に感情移入できる度合いが増すというのに。
イタリアの映画の規制もゆるいのか、国民性なのか、SEXの描写がよく言えばおおらか。主人公がヒロインの少女を無理やりやってしまうあたりは、観客が喜ぶから外せないということか。少し頭がおかしい子なので、片乳を放り出して爆睡していたりするので、どっちもどっちか。この映画のメインターゲットが若者なのか、子供なのか、もう一つ定まっていない気がする。
いろいろ残念な部分が多いが、「クモに噛まれたか?」「それとも宇宙人か?」というセリフは、明らかにスパイダーマンとスーパーマンのことを言っており、あちらでもハリウッド資本のスーパーヒーロー映画がウケている様子がうかがえる。だったらなおさら、もう少し世界基準でキャスティングを考えてほしかった。
子供の頃口ずさんだなじみのメロディを、イタリア語の渋いアレンジで聴くのも、不思議な感覚で、いいとも、悪いとも言えない。ただし、『鋼鉄ジーグ』とは、共通する設定は一つもない。永井豪、ダイナミックプロはクレジットされるが、それ以外の名前は作曲家すらクレジットされておらず、最低限の原作リスペクトにとどまったようだ。とにかく、あの当時、毎週驚異のクオリティでお茶の間に流れていた日本製のテレビアニメーションは、国際的に良質の娯楽であったことが良く分かった。