「.」皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。伊製異色ピカレスクヒーローもので原題"Lo chiamavano Jeeg Robot"。あくまで日本のアニメ『鋼鉄ジーグ('75~'76)』を憧れのヒーローとして味付け程度に扱っており、設定やキャラクターを引き継いだり、ロボットが登場する訳ではない。主人公が冴えない中年男性で、前半は『レオン('94)』を彷彿させる。テンポにやや難が有るものの、競技場で繰り広げられるクライマックスは迫力充分。細かい綻びや粗削りな印象は拭えないが、それ等を凌駕する熱い魅力に満ち溢れている。70/100点。
・事情が判らない中年男性が巻き込まれる序盤の展開以外にも、鳥瞰を彷徨い徐々にズームンして路地を駆け抜ける開始早々のカメラワークにも『レオン('94)』を想起させるものがあった。
・最初のシーケンスの後、日本語のタイトルがドンッと出るが、これはイタリアでの初公開時やインターナショナル版でも同じらしい。スタッフロール時に流れる歌は、主人公“エンツォ・チェコッティ”を演じたC.サンタマリアが唄うバラードでイタリア版『鋼鉄ジーグ』の主題歌だと云う。
・後半の競技場から始まる格闘シーンからラストに掛ける展開や描写は、様々な作品の影響が見て取れ、それらの作品に対する監督の思い入れを窺い知る事が出来る。この後半を観るだけでも作品を観る価値があり、熱い想いが十二分に伝わった。
・敵対する“ジンガロ”のL.マリネッリ、ヒロイン“アレッシア”のI.パストレッリ、マフィアを束ねる女ボス“ヌンツィア”のA.トルッポと魅力的なキャストが結集しており、中でもI.パストレッリのコケティッシュな魅力に眼を奪われた。これ等のイカレた連中が取り巻く事で、ポルノ好きの草臥れた中年男性の平凡性が際立ち、後の展開の意外性とバランスを取っている。
・鑑賞日:2017年6月1日(木)