「現時点で最高の311映画です」太陽の蓋 宍戸俊則(shunsoku2002)さんの映画レビュー(感想・評価)
現時点で最高の311映画です
私は福島県伊達市に住んで、福島市で働いていて311に遭遇しました。現在は家族で「自主避難」、移住して札幌で生活しています。それ以前には双葉町で高校教師として生活していた事もあります。
だから、作中に登場する地元住民の心情も「イチF」従業員青年の心構えも、事故発生直後で地元にこそ情報が届かなかったいら立ちも、よくぞそこまで調べて描いてくれた、と感じました。
また作中に登場する、ネットで必死に情報を探す別の人物の姿は私自身と重なりました。
事故発生以来、相当な手間と暇とカネをかけて原発事故発生直後の状況を調べ、集めてきました。
政府事故調報告書、国会事故調報告書、東電報告書、民間事故調報告書、東電テレビ会議記録などの公開された記録報告。海外で書かれたものの翻訳物。当時の政府内外の政治家やメディア関係者の著作や講演。避難指示で避難した知人からの情報。テレビの各種情報やドキュメンタリー番組。週2回の統合本部記者会見記録。
そして、元生徒が事故原発で働き続けているという情報や映像。(某テレビ番組で、原発に取材に入ったタレントが元生徒に話しかけている所を見つけた時は、思わず目頭が熱くなりました。)
この映画が描いている官邸の混乱具合と、被災現地住民の混乱具合は、かなり事実に近いものです。地元住民の混乱は実際にはもっと過酷だったのですが。
官邸のマスコミの無力感も、ほぼ事実通りだったと思われます。
この映画の評価を下げる材料にはなりませんが、この映画でさえ描けなかった情報の偏りが、事故発生直後の日本にはありました。
テレビ局や新聞局、芸能関係者には、2011年3月12日時点で遠距離避難が推奨されたり、命令されたりしたことです。
この事実は、このままいけばおそらく闇に葬られます。
けれどこの映画のような、可能な限り事実に迫ろうとするものを作ろうとする努力を続ける人がいれば、いずれは明るみに出せるかもしれません。
この映画の最後で語られるように。
今も日本での原発事故は終わっていません。
首の皮一枚、偶然にこれまでの生活が続いているように思えているだけだから。