「実にアメリカ的なポップコーン・ムービー。」マネーモンスター 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
実にアメリカ的なポップコーン・ムービー。
お金の匂いが大好きなアメリカらしいテーマ。投資と株を根底に据えながらも、エンターテインメント性の高い娯楽作の趣。うむ。才女ジョディ・フォスター監督作品ということもあり、社会派のテイストが強めか?と思って見始めたが、実際にはパニック映画の色合いが強い。この映画から、アメリカの経済問題だとか金融問題などを炙り出そう、というよりは、ポップコーン片手に固唾を飲んで楽しむ、というスタイルが向いている作品のようだ。
そう考えると、ジョージ・クルーニー×ジュリア・ロバーツという演者の濃さは少々重たかったか。クルーニーの軽やかなステップを拝めても、ハリウッドの重鎮ともいうべき男の存在感は大きく、勇気を出して言うとミスキャストかもしれないと思う。軽率な司会者として登場するのに中盤からは完全にヒーロー化してしまうし、クルーニーが演じたことで必要以上の重厚感が出てしまった。また、軽薄なテレビ司会者と敏腕プロデューサーそして愚かで無知な犯人というキャラクターがあまり活かしきれておらず、主要なキャストである3人の間に張り巡らされる緊張感が所々で途切れてしまい、それに伴ってストーリーも度々停滞して見えた。
良かったのはジュリア・ロバーツ。90年代のロマコメ女王も年齢を重ね、こういった落ち着いた大人の知的な役柄が違和感なくハマるようになった。「8月の家族たち」もとても良かったし、40歳を過ぎた女優に冷たいと言われるハリウッドで、まだまだ活躍が期待できる女優の一人だ。
しかしアメリカという国は相変わらず、一部の悪賢い人間と、大半の知性のかけらもない人間とで成り立っているのだなぁ、と改めて思う。人の命がかかった人質事件が起きているのに、バラエティ番組がそれをリアルタイムで悪趣味なジョークにして大笑いしてるなんて、日本ではありえないし、アメリカでもさすがに「映画の中だからですよね?」と不安になる。