TOMORROW パーマネントライフを探して : 映画評論・批評
2016年12月20日更新
2016年12月23日よりシアター・イメージフォーラムほかにてロードショー
明日がちょっとだけ軽くなる、ポジティブなエネルギーに満ちたエコ・ドキュメンタリー
天は二物を与えずというが、世の中つねに例外はあるものだ。「イングロリアス・バスターズ」などで知られる女優のメラニー・ロランが共同監督、出演を務めるこのドキュメンタリーを観たら、誰もが鼓舞されるのではないだろうか。よくできていて面白い、というだけではない。ここにはエコロジーに対する無理のない、等身大のヴィジョンがある。エンターテインメントでわかりやすいという点では、マイケル・ムーアのドキュメンタリーに近い(彼ほど挑発的ではないが)。自分たちが足を使って世界各地に赴き、素人の視点から疑問を投げかけ検証していくというスタイルもまたムーア的だ。だが最大の魅力は、本作の意図が世界の危機を告発するだけではなく、その先の解決作を模索する、まさにTomorrowを考えたポジティブなエネルギーに貫かれていること。フランスですでに一年近くもロングランヒットを続けているというのも頷ける。
人類滅亡の危機を説いた論文を目にしたことがきっかけだったという制作チームは、一般レベルでいま何ができるのかを探るため、世界各地の興味深い場所を訪問する。たとえばアイスランドの水力と地熱エネルギーを使った発電システムを見学したり、デトロイトの過疎地帯で有機農業を始めたグループを訪れたり。そのテーマは、農業、エネルギーから経済、民主主義、教育にまで及ぶ。専門用語や数字が並ぶ、専門家の難解な解説をイラストにしたり、ユーモアもたたえたナレーションでフォローすることで、映像的な楽しさと小気味よいテンポが同居する。さらに透明な歌声のスウェーデンのシンガー、フレドリカ・スタールをフィーチャーした音楽は、素朴な自然の風景と相まって、映画にスピリチュアルな広がりをもたらしている。
本作を観て「ナイーブ、短絡的」と評する人もいるかもしれない。だがたしかなのは、実際世界にはこうした生き方を実践している人々が存在するということだ。彼らにできてなぜ我々にできないのか、ということをこの映画は考えさせる、と同時に、純粋に未知なる世界の刺激的な発見をもたらしてくれる。
(佐藤久理子)