「無謀な映画化」美しい星 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
無謀な映画化
三島由紀夫の執筆動機には相次ぐ核実験、第三次大戦での人類滅亡の恐怖があったようです、視点を宇宙の高みに移して人類の原罪、あるべき地球の未来を問う、いかにも論壇好みの哲学的で深遠なテーマですが、映画では主人公を気象予報士とし、環境問題・地球温暖化の危機との対峙に変えています。
謎の異星人黒木(佐々木蔵之介)はオリンポスの神気取り、高いところから見るのではなく高いところからものを言う、火星人の父(リリー・フランキー)はまるでゴア副大統領、水星人の息子(亀梨和也)は前世代・先進国責任論、これは会議での途上国の常套句、各人の主張も論点も型どおり。娘(橋本愛)の金星人は聖母マリアもどき、母(中嶋朋子)は地球人(原作では木星人)らしい、ファミリーを代表して「太陽系連合」とは飛躍だろう。
メン・イン・ブラックのエイリアンなら多少は笑えますが東洋的な幽体合体では分かりにくいし特別な能力があるような無いような曖昧さ。円盤を呼ぶくだりはテレビのオカルト番組で観たまま、そもそもSFの必要性も醍醐味も端から想定外に思えます。
水の星・地球、その美しい水をマルチ商法に使うとは何事だと言ってみても針小棒大とんちんかん、円盤の迎えが福島なのは福島を持ち出したいだけでしょう。
勿論「不都合な真実」は真摯に向き合うべき重要なテーマ、噛み砕いた演出で関心を高めようとする意図は買いますがそもそも太陽系惑星で知的生命は地球だけというのは今や小学生でも知っているご時世ですからもっともらしい嘘はつけませんし原作との板挟み、そこで暗黙の了解、謂わば学芸会で動物のお面をかぶってセリフをいうような状況では舞台を現代に移しての映画化自体が陳腐化、無謀だったのかもしれませんね。あくまでも主観ですのでご容赦ください。