王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間のレビュー・感想・評価
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父と息子の悲しい物語
李氏朝鮮第21代王英祖と、
息子 荘献世子(死後、思悼世子と呼ばれる)の物語。
ちなみに、荘献世子(思悼世子)の息子が
李祘(イサン)、のちの第22代王正祖で、
この時代の話では、
映画にもドラマにも、よく扱われています。
李祘(イサン)を主人公にしたものは
たくさん見かけるけれど、
その父である荘献世子(思悼世子)を
主人公にしたものは、
今まで見た記憶がありません。
英祖が荘献世子(思悼世子)を米櫃の中に閉じ込め、
死に至らしめたいう史実について、
到底理解されず、
朝鮮時代にまつわるエピソードの中でも、
大きな謎でした。
しかしこの映画を見て、
その謎が解けたような気がします。
どんな経緯で、どんな背景があって、
二人はどんな気持ちでいたのか。
キャスティングは、英祖にソンガンホ、
荘献世子(思悼世子)にユアインという、
これは期待せずにはいられない二人。
二人とも、期待通り、
期待以上に凄みある演技で、
英祖、荘献世子(思悼世子)、
それぞれの思いに引き込まれました。
この映画を見ていて思ったのは、
王と世子以前に、
父と息子の物語なんだということ。
どこの父親が息子を死に至らしめて、
平気でいられるでしょうか。
【“王家の様々な考。そして、礼節を重んじる王と礼節より人及び文が上と考える息子との確執。”王家に生まれてしまったからこそ、起きた悲劇を情感豊かに描いた作品。子を持つ者には沁みる作品でもある。】
ー 18世紀に実際に起きた、李氏朝鮮の最大の謎と言われる事件を映画化した歴史ドラマだそうである。-
■朝鮮第21代国王・英祖(ソン・ガンホ)は、40才を過ぎて生まれた息子思悼世子(サド)(ユ・アイン)を可愛がり、優れた王位継承者に育てようとする。
だが息子の思悼は自由奔放な青年に育ち、英祖の期待は怒りと失望に転じた。
父子の関係は悪化していき、やがて英祖は王として、我が子である思悼に自害を迫るのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、観ていて、子を持つ者にとっては、キツイ物語である。
それは、英祖も息子思悼世子(サド)も本当に相手を憎んでいるわけではないのに、王たる者の資質を求める英祖の要求に、幼き頃は従っていた思悼世子(サド)が青年になるにつれ、それに違和感を抱いて行く姿。
ー これは、現代社会でも、当てはまる事ではないであろうか。親の過剰なる期待に反発し、親が求めるレールに乗る事を拒否する子供の心。-
・英祖は、武官に慕われ、息子思悼世子(サド)が文官に慕われている姿を見ても、親子の思想が違う事が良く分かる。
ー ”文武両道”という考えは、無かったのであろうか・・、英祖には・・。-
・そして、決裂した二人。
英祖は、息子思悼世子(サド)を皆の前で、米びつに閉じこめるのである。
自ら、釘を打ち・・。そして、思悼世子(サド)の側についていたモノの首を撥ねるのである。息子を文の道にそそのかしたとして・・。
ー その姿を心配そうに見る思悼世子(サド)の妻、暎嬪(チョン・ヘジン)と息子イ・サン(後の正祖)(ソ・ジソブ)。
この辺りは、英祖も思悼世子も側室の子である事が背景にある。-
■英祖は、息子思悼世子(サド)を見限りつつ、自身も隠居場に居を移す。
そして、思悼世子の息子、イ・サンを寵愛する姿。
英祖が本当に息子を憎んでいれば行えない行為である。
・思悼世子(サド)が、米びつに閉じこめられた後、劇中では過去の親子の絆が崩壊していく過程が描かれる。
ー 英祖は息子に礼節、学問を学ぶことを強い、息子はそれに反発するように、画を嗜み、民が読む書を愉しむのである。-
■思悼世子(サド)が米びつの中、弱って行く中で、且つて描いた見事なる鷹の絵を張った扇子を手放さない姿。
そして、八日目。英祖は米びつを壊させ、涙を流しつつ、且つては愛した息子の亡骸の手を握るのである・・。
そして、英祖は亡くなり、立派に成長したイ・サン(後の正祖)は、大勢の臣下の前で亡き父が死ぬまで手元に置いていた鷹の絵を張った扇子を見事に操り、皆の前で踊るのである。可なり沁みるシーンである。
<今作は、親子の文武に対する見解の違いから起こってしまった齟齬と、それを見て育った正祖が、亡き父の良き所、亡き祖父の良い所を理解し、良き王となる事を期待させて終わるの作品swある。
今作は子に対し過剰なる期待を与えてしまった【子育ての難しさを描いた作品】でもある。>
演技巧者なのは見もの
王朝史上最大の謎と言われてる米びつ事件でしたっけ。
実の父が血迷ったのでもなく、
数日も目の届くところに
息子を閉じこめた箱を置いてじわじわと
死に追いやった異常性。
この映画では、
息子は理想に燃えてたものの鼻っ柱を折られ
ヤケになって自堕落、謀反へ、の流れ。
一方父親は理想とする息子像と
現実との乖離が受け入れがたく、
息子を排除する方へと突き進む。
どちらかが、途中段階で嘘でもいいから
謝りなりしておけば最大の悲劇に至らなかったものを
ある意味この親子は決して頭を下げないという
意地っばり過ぎりところが
そっくりの性質。
悲劇はなるべくして起きたと言えるかもしれない。
謎に包まれてる事件を親子の問題と捉え、
その2人の心象を描いたのはよいアプローチ。
出演者もみな演技巧者と知られる人ばかりで、
心のひだを演じ切っている。
しかし正直エンタメとして楽しいかどうか。
ある程度の予備知識は必須かと
朝鮮王朝21代の英祖と廃世子された思悼世子の葛藤をかなり史実に近い形で描かれていると評価されている作品。残念ながらある程度の予備知識がないと、父と息子の葛藤にしか映らない可能性がある。
英祖の生母はドラマ「トンイ」主人公。つまり最下層の身分の人が母親だというコンプレックスや王位争いなどが英祖の人格形成に大きな影響を与えている。そのため、自分の正妃とも先王の正妃とも円満でなく、最愛の後宮から生まれたのが思悼世子だ。しかも40歳を過ぎて生まれた男子なので、溺愛と過度な期待を注いでしまった。それがこの事件の遠因である。
個人的には、ストーリーや作品性を高く評価したいけれど、出演した俳優の中で役に合っていると感じた人は1人もいなかった。大妃役のキム・ヘスクくらいか。
この時の英祖は、朝鮮王朝の存続をかけて一大決心をしたのだと思う。親である前に王であった。そうするしかなかったのだと思う。
まさに『恨』。「礼節」と「人」の間のわかりあえない感情
なぜか涙が出てくる。
王という立場上、親としてよりも王としての愛情を注ぐ親。
王子という立場上、芸の才や生き様そのままを認めてもらえず、
王の愛を受け入れられずに自身がわからなくなり壊れていく子。
才があり、世の渡り方をも知りながら、父への孝情を忘れない孫。
親子の想いが通じ合わない辛さを感じさせる。
国の「礼節」と「人」のどちらに重きをおくか、
わかっていたとしても、
立場もあり王と子は受け入れ合えず強い憤りが起こる。
まさしく韓国でいわれる『恨』
誰のせいでもない、誰にもぶつけることのできない、悔しい感情。
父と子の解けなかった『恨』を解くかのような孫のラストシーンに、慰められる。
観終わったあとのナントもいえない、感情。
これが『恨』なのか。
人が人と関わることの重さを考えさせる
なんか韓国社会の縮図みたい…。
王の運命
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