王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間のレビュー・感想・評価
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【“王家の様々な考。そして、礼節を重んじる王と礼節より人及び文が上と考える息子との確執。”王家に生まれてしまったからこそ、起きた悲劇を情感豊かに描いた作品。子を持つ者には沁みる作品でもある。】
ー 18世紀に実際に起きた、李氏朝鮮の最大の謎と言われる事件を映画化した歴史ドラマだそうである。-
■朝鮮第21代国王・英祖(ソン・ガンホ)は、40才を過ぎて生まれた息子思悼世子(サド)(ユ・アイン)を可愛がり、優れた王位継承者に育てようとする。
だが息子の思悼は自由奔放な青年に育ち、英祖の期待は怒りと失望に転じた。
父子の関係は悪化していき、やがて英祖は王として、我が子である思悼に自害を迫るのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、観ていて、子を持つ者にとっては、キツイ物語である。
それは、英祖も息子思悼世子(サド)も本当に相手を憎んでいるわけではないのに、王たる者の資質を求める英祖の要求に、幼き頃は従っていた思悼世子(サド)が青年になるにつれ、それに違和感を抱いて行く姿。
ー これは、現代社会でも、当てはまる事ではないであろうか。親の過剰なる期待に反発し、親が求めるレールに乗る事を拒否する子供の心。-
・英祖は、武官に慕われ、息子思悼世子(サド)が文官に慕われている姿を見ても、親子の思想が違う事が良く分かる。
ー ”文武両道”という考えは、無かったのであろうか・・、英祖には・・。-
・そして、決裂した二人。
英祖は、息子思悼世子(サド)を皆の前で、米びつに閉じこめるのである。
自ら、釘を打ち・・。そして、思悼世子(サド)の側についていたモノの首を撥ねるのである。息子を文の道にそそのかしたとして・・。
ー その姿を心配そうに見る思悼世子(サド)の妻、暎嬪(チョン・ヘジン)と息子イ・サン(後の正祖)(ソ・ジソブ)。
この辺りは、英祖も思悼世子も側室の子である事が背景にある。-
■英祖は、息子思悼世子(サド)を見限りつつ、自身も隠居場に居を移す。
そして、思悼世子の息子、イ・サンを寵愛する姿。
英祖が本当に息子を憎んでいれば行えない行為である。
・思悼世子(サド)が、米びつに閉じこめられた後、劇中では過去の親子の絆が崩壊していく過程が描かれる。
ー 英祖は息子に礼節、学問を学ぶことを強い、息子はそれに反発するように、画を嗜み、民が読む書を愉しむのである。-
■思悼世子(サド)が米びつの中、弱って行く中で、且つて描いた見事なる鷹の絵を張った扇子を手放さない姿。
そして、八日目。英祖は米びつを壊させ、涙を流しつつ、且つては愛した息子の亡骸の手を握るのである・・。
そして、英祖は亡くなり、立派に成長したイ・サン(後の正祖)は、大勢の臣下の前で亡き父が死ぬまで手元に置いていた鷹の絵を張った扇子を見事に操り、皆の前で踊るのである。可なり沁みるシーンである。
<今作は、親子の文武に対する見解の違いから起こってしまった齟齬と、それを見て育った正祖が、亡き父の良き所、亡き祖父の良い所を理解し、良き王となる事を期待させて終わるの作品swある。
今作は子に対し過剰なる期待を与えてしまった【子育ての難しさを描いた作品】でもある。>
演技巧者なのは見もの
王朝史上最大の謎と言われてる米びつ事件でしたっけ。
実の父が血迷ったのでもなく、
数日も目の届くところに
息子を閉じこめた箱を置いてじわじわと
死に追いやった異常性。
この映画では、
息子は理想に燃えてたものの鼻っ柱を折られ
ヤケになって自堕落、謀反へ、の流れ。
一方父親は理想とする息子像と
現実との乖離が受け入れがたく、
息子を排除する方へと突き進む。
どちらかが、途中段階で嘘でもいいから
謝りなりしておけば最大の悲劇に至らなかったものを
ある意味この親子は決して頭を下げないという
意地っばり過ぎりところが
そっくりの性質。
悲劇はなるべくして起きたと言えるかもしれない。
謎に包まれてる事件を親子の問題と捉え、
その2人の心象を描いたのはよいアプローチ。
出演者もみな演技巧者と知られる人ばかりで、
心のひだを演じ切っている。
しかし正直エンタメとして楽しいかどうか。
ある程度の予備知識は必須かと
朝鮮王朝21代の英祖と廃世子された思悼世子の葛藤をかなり史実に近い形で描かれていると評価されている作品。残念ながらある程度の予備知識がないと、父と息子の葛藤にしか映らない可能性がある。
英祖の生母はドラマ「トンイ」主人公。つまり最下層の身分の人が母親だというコンプレックスや王位争いなどが英祖の人格形成に大きな影響を与えている。そのため、自分の正妃とも先王の正妃とも円満でなく、最愛の後宮から生まれたのが思悼世子だ。しかも40歳を過ぎて生まれた男子なので、溺愛と過度な期待を注いでしまった。それがこの事件の遠因である。
個人的には、ストーリーや作品性を高く評価したいけれど、出演した俳優の中で役に合っていると感じた人は1人もいなかった。大妃役のキム・ヘスクくらいか。
この時の英祖は、朝鮮王朝の存続をかけて一大決心をしたのだと思う。親である前に王であった。そうするしかなかったのだと思う。
まさに『恨』。「礼節」と「人」の間のわかりあえない感情
なぜか涙が出てくる。
王という立場上、親としてよりも王としての愛情を注ぐ親。
王子という立場上、芸の才や生き様そのままを認めてもらえず、
王の愛を受け入れられずに自身がわからなくなり壊れていく子。
才があり、世の渡り方をも知りながら、父への孝情を忘れない孫。
親子の想いが通じ合わない辛さを感じさせる。
国の「礼節」と「人」のどちらに重きをおくか、
わかっていたとしても、
立場もあり王と子は受け入れ合えず強い憤りが起こる。
まさしく韓国でいわれる『恨』
誰のせいでもない、誰にもぶつけることのできない、悔しい感情。
父と子の解けなかった『恨』を解くかのような孫のラストシーンに、慰められる。
観終わったあとのナントもいえない、感情。
これが『恨』なのか。
韓国歴史映画大好き
韓国のドロドロした歴史映画は大好きです。
リアリティも少し感じつつ、韓国文化はやはり理解できないにしても、薄いオカルト映画を観るよりも韓国の血縁闘争である濃いドロドロ映画の方がずっと面白い。
人が人と関わることの重さを考えさせる
この映画は、単なる歴史ドラマを越え、我々の日常に明日にも起こり得る人間関係の悲しい「すれ違い」を凄まじい迫力で描き出している。親が子供を死なせる事件が頻発する現代、多くの人に見てほしい。
「イ・サン」や「トン・イ」などのテレビドラマを全く知らず韓国史の知識もない友人(男性)と鑑賞したが、私以上に感動し、「韓国映画にここまでできるとは!」と絶賛していた。
なお、この映画は、過去と現在が同時に描かれる構成で人物の地位や系図の説明も全くないままにドラマが進行するが、「イ・サン」を知らずに鑑賞した知人たちに尋ねると、内容はとてもよくわかったそうだ。
なんか韓国社会の縮図みたい…。
学歴と身分とみかけと…韓国が最も重要視するこれらを信条とする父親と、それよりも情を大切にしたい子供。それが王様と息子という立場からこんな切実な結末に。
よくよく考えると理解あえない父と息子の親子ゲンカなんだけど時代は謀反者はすぐ死罪の時代ですからね。
いまの時代ならパワハラ、幼児虐待、エトセトラな感じですが…。
誰もが自分がいなければこんな結末にはならなかった、と思うところが救いでしょうか。
王の運命
骨太の歴史大作映画。ここまで力をつけてきたか韓国映画、と邦画を振り返って愕然とさせられる。それぞれの立場に立った人間の心理を踏まえ、感情を描ききっている。不自然さはなく、説得力満点の脚本だった。韓流ドラマにありがちな、不自然な誇張演技もなく、むしろ感情を抑えた、迫力ある演技に喝采。祖父王、皇太子、孫息子と、三者三様のど迫力の演技が見もの。ハリウッドにも打って出られるレベル。
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